Bird Cage

そんなある日、ある初夏の天気が良い日に私は一人でランチを取っていた。私とランチを取りたがる女子社員はいない。過酷な営業部所で入社当時居た十人程の女子社員は全員辞め、残ったのは後から入ってきた事務員の若い子たち。私は営業職だから給料も違えば待遇も違う。

そんな私を一目置いている、というわけではない。33で彼氏もいない毎日殆ど営業でデスクを空けているという状態の私に振る話題もないのが現状だ。

『烏丸さんさー、なんかうちらといる次元が違うよね』
『あー、分かるなんかつんつんしてるしね』
と事務職の女の子たちが話しているのを偶然聞いてしまったことがある。

次元?つんつん?
そんなつもりはない。

どうやら私の鳥かごはかなり歪で、触れてくれる人もいないということが分かった。
まぁそれはそれで小さな鳥かごを飛び回れるから良いっちゃいいんだけどね。

一人手作り弁当をもくもくと食べていると、

「よ」と鳥飼がコーヒーの入ったカップを私の頬にぴとっとくっつけてきて隣に座った。出たな。歪な鳥かごに無遠慮に手を突っ込んでくるヤツ。

屋上庭園は名の通り庭園になっている。緑が多く季節ごとの花が植えられている。あちこちにベンチが配置されていて、私と同じようにランチを取りに来る社員も少なくない。ただし夏は暑いし、冬は寒い。社食はあるがここは膨大な社員が利用する社食で席が取れなかった社食難民の場でもあるのだ。

鳥飼は私の弁当箱を覘くと

「お!卵焼きうまそ~、一つ頂戴」と言いながら私の了承を得ずとも勝手に二つあるうちの一つの卵焼きを手づかみで奪っていった。
「ちょっとぉ、勝手にやめてよね」目を吊り上げると
「そんな顔すんなよ、美人が台無しだぜ?」と鳥飼は悪ぶれた様子もなくにこにこ。「そう言えばさ~、俺らがまだ入社仕立てのとき烏丸よく弁当作ってくれたよな~」

「給料日前でピンチだから助けてくれって言われればね」

残った卵焼きを口に頬張ると

「あの時と味が変わってない」

鳥飼は意味深そうに笑い少しだけ肉厚の色っぽい唇を舌でなぞった。