Bird Cage


小鳥遊 光輝(たかなし こうき)。それが彼の名前だ。
部署は同じ。私は課長。彼は私の直属の上司で営業一部の部長で、こちらもやはり同じ同期で33歳。

いつも鉄の仮面をつけたような冷たい表情と物言い。一重(ひとえ)の視線は鋭く薄い唇は軽薄そうに見える。いつも枠無しメガネをつけていて笑った所は見たことがない。”クール”が歩いているような感じだ。
ひょろりと身長が高く見ようによっちゃこれも”アリ”かな、と思うが、何せ頭が固く誰に対しても冷たい態度だから誰に対しても優しい物言いで人懐っこい犬のような鳥飼より嫌われている。

だから営業第一部で働いている女の子たちは二部をひたすら羨ましがっている状態。

『イケメンなうえ優しい上司って最高じゃない!?』と噂話はあちこちで聞くが、私は『どこが?』と耳を疑ってしまう。

小鳥遊部長は、まぁ嫌われるタイプだけどただし強く叱ったり怒ったりはしない。ようは淡々としているのだ。その淡々とした部分が逆に冷酷さを感じるが。
私も彼に何度企画書にダメ出しを食らったか。何度凹んだか。

小鳥遊部長はちらりと私を見下ろすと薄い唇を少しだけへの字に下げた。
別段特別なことでもない。私は彼のこの表情を見慣れている。

「今日は珍しく遅い時間ですね、いつもはもっと早く出社してるのに」と私が小鳥遊部長に問いかけると
「寝坊をしてね。誰も起こしてくれる人が居ないとついついアラームを切ってしまう」

そう、彼の不機嫌顔は朝は特に酷い。聞けば低血圧だとか。
血糖値を上げる為、毎日自分で選んだフルーツをミキサーにかけてスムージーを作っている、と言うのはもっぱらの噂。

そう言えば今日もほんのりベリーの香りがするが、香水等の類ではないだろう。

この男がそんな光緒な趣味を持つとは到底思えない。まぁ女がいれば別だけれど。鷹の登場でバードウォッチングは終了。セキセイインコもいつの間にか消えていたし。

ああ、いやだ。人のあれこれを想像するのは。これから怒涛の仕事が待っているのに、寄りによって小鳥遊部長の女の有無を考えている自分に嫌気がさす。

別に居ようが居ないか私には関係ないけどね。