ドジっ子令嬢は着ぐるみうさぎに恋をする

【#121】盆踊り?
(霧島海都――鬼島チーフ・私的観察記録)

記録日:某月某日(晴れ)
場所:キッズアクティビティルーム(KAR)
対象:企画部マジアク課・花村千成
状況:バックダンサーお姉さん代役

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スッキリした秋晴れ。だが俺の心だけは積乱雲。胃はすでにキリキリを通り越して穴だらけ。
よりによって代役が、“一日一ドジ保証付き”のカメ子だ。

事の発端は昨日。バックダンサーお姉さんから早退申請が入り、候補を絞った結果。
残ったのは、出したくねぇ最終兵器。おっちゃん部長と相談して特別手当つけて練習に参加させたが……本番でやらかす未来しか見えねぇ。



そして今。袖のカメ子を見てる余裕なんてねぇよ。俺の胃はキリキリどころか、穴あきホルモン状態。

視線を俺の周り、観客席に移した瞬間――さらに地獄が広がった。

中央には、背の高い謎の美男美女。誰よりも目立ってやがる、そこに居るだけで。

誰だあの夫婦?

左側にはマジアク課の部下5人。あいつらはカメ子のことをからかいながらも守る、いつもの顔ぶれ。まあ、そこは安心。

問題は右側。よりによって、俺の家族が勢揃いしてやがる。親父、母さん、兄貴2人。なんでこに⁉︎

後で知った。おっちゃん部長が親父に『面白いものが見られる』なんて垂れ込みやがったらしい。

……おっちゃんよ、これはお笑い劇場じゃねぇんだよ。俺の寿命が削れる修羅場なんだぞ。

そして追い討ち。さっき真ん中にいた美男美女が、すっと立ち上がり、俺の家族の方へ歩いて来る。母さんが笑顔で迎えてる……知り合いってことか。

制服デザイナー・花村圭衣さんと、カフェ『Bon Bon』の副社長で慶智の王子の一人・花村(烏丸・からすまる)大和さん。

なんで、よりによってこのメンツが一堂に会すんだよ。

母さんの鷹の目、親父の落ち着いた視線、兄貴たちの半笑い。そこに圭衣さんと大和さんまで加わって――もう俺の胃は完全崩壊。

お願いだ、カメ子。今夜だけは、頼むから失敗すんな。