「おい、はなむら――‼︎」
「す、すみません!」
俺の声に、条件反射みたいにぺこぺこ頭を下げる女。背も低い、動きも小さい。小動物みたいなこいつは、花村千成。通称カメ子。
4月からの研修を終えて、マジカルアクティビティ課《通称マジアク》に配属された“期待の新人”……だった。
そう、“だった”――過去形だ。
小日向・通称おっちゃん部長から渡された資料を見たとき、まず俺は眉をひそめた。
第一希望、着ぐるみ。
しかも身長150センチ。
はぁ? 何考えてんだ、このチビ。
おまえ、着ぐるみをナメてんのか?
ウィルもラーラも、頭から足まで全部着ると重量は10キロ超。持久力と体幹がなきゃ立ってることすらできない。どう考えても、このサイズじゃ無理だろう。
「せいぜい雑用か事務なら使えるか」
そう言い放ち、それ以上履歴書も読まず、机の引き出しに放り込んだ。
すると、おっちゃんがニヤリと笑う。
「まあまあ、海都くん。この子、けっこう起
爆剤になるかもよ――いい意味で」
温厚で人望が厚い小日向部長。だが、俺は知っている。その優しい仮面の下には、何でも見抜く鋭い勘が潜んでいることを。
とはいえ、おっちゃんよ。
俺の大事なマジアク課に、勝手に爆弾を仕込むな。タヌキめ。
そうして迎え入れたカメ子。見た目は大人しそうな小動物。中身はドジの化身だった。
やらかす、やらかす、とにかくやらかす。
•階段を踏み外す
•平らな所で転ぶ
•内線が切れてるのに延々と話し続ける
•「押す」と書かれたドアを全力で引く(英語表記まで無視)
•プリントしたばかりの資料を流れ作業でシュレッダーへ(本人は途中まで気づかない)
こんなもんは朝飯前。どういう脳の構造してるとそうなるのか、本気で謎だ。まあ、ある意味では天才だな。
しかもこいつの武勇伝は、就活の面接の時点で始まっていた。
着ぐるみ希望、企画部マジアク課志望。
そんな物好き、他にはいない。面接官は企画部長、小日向広大。これはおっちゃんから後日聞いた話だ。
パレスピーターズホテルには、いろんな動機を持ったやつが集まる。
•ホテル業に興味がある
•接客業が向いている
•ピーターズファミリーが好き(特に若い女性社員に多い)
ほとんどがフロントやホスピタリティ部門といった“表の顔”を希望する中、このチビは唯一、堂々と着ぐるみ志望を口にしたらしい。
いや、その時点で俺は『馬鹿か』って思ったが、同時に妙な引っかかりも覚えていた。
あの日、2年前に一目で覚えた小さな背中と、声の響き。まさか……
「す、すみません!」
俺の声に、条件反射みたいにぺこぺこ頭を下げる女。背も低い、動きも小さい。小動物みたいなこいつは、花村千成。通称カメ子。
4月からの研修を終えて、マジカルアクティビティ課《通称マジアク》に配属された“期待の新人”……だった。
そう、“だった”――過去形だ。
小日向・通称おっちゃん部長から渡された資料を見たとき、まず俺は眉をひそめた。
第一希望、着ぐるみ。
しかも身長150センチ。
はぁ? 何考えてんだ、このチビ。
おまえ、着ぐるみをナメてんのか?
ウィルもラーラも、頭から足まで全部着ると重量は10キロ超。持久力と体幹がなきゃ立ってることすらできない。どう考えても、このサイズじゃ無理だろう。
「せいぜい雑用か事務なら使えるか」
そう言い放ち、それ以上履歴書も読まず、机の引き出しに放り込んだ。
すると、おっちゃんがニヤリと笑う。
「まあまあ、海都くん。この子、けっこう起
爆剤になるかもよ――いい意味で」
温厚で人望が厚い小日向部長。だが、俺は知っている。その優しい仮面の下には、何でも見抜く鋭い勘が潜んでいることを。
とはいえ、おっちゃんよ。
俺の大事なマジアク課に、勝手に爆弾を仕込むな。タヌキめ。
そうして迎え入れたカメ子。見た目は大人しそうな小動物。中身はドジの化身だった。
やらかす、やらかす、とにかくやらかす。
•階段を踏み外す
•平らな所で転ぶ
•内線が切れてるのに延々と話し続ける
•「押す」と書かれたドアを全力で引く(英語表記まで無視)
•プリントしたばかりの資料を流れ作業でシュレッダーへ(本人は途中まで気づかない)
こんなもんは朝飯前。どういう脳の構造してるとそうなるのか、本気で謎だ。まあ、ある意味では天才だな。
しかもこいつの武勇伝は、就活の面接の時点で始まっていた。
着ぐるみ希望、企画部マジアク課志望。
そんな物好き、他にはいない。面接官は企画部長、小日向広大。これはおっちゃんから後日聞いた話だ。
パレスピーターズホテルには、いろんな動機を持ったやつが集まる。
•ホテル業に興味がある
•接客業が向いている
•ピーターズファミリーが好き(特に若い女性社員に多い)
ほとんどがフロントやホスピタリティ部門といった“表の顔”を希望する中、このチビは唯一、堂々と着ぐるみ志望を口にしたらしい。
いや、その時点で俺は『馬鹿か』って思ったが、同時に妙な引っかかりも覚えていた。
あの日、2年前に一目で覚えた小さな背中と、声の響き。まさか……



