ドジっ子令嬢は着ぐるみうさぎに恋をする

次にやってきたのは、小柄な男の子。背丈からして小学校低学年くらいだろうか。

おお、珍しい! この年代の男の子って、だいたいウサギはスルーするのに。

もしかして、大和おじちゃまみたいな筋金入りピーターズファン!?
だったら一生の思い出作ってあげる! 
ウィル姉さん、全力でいきます!


「はい、つぎ〜。座って……はいチーズ! パシャ!……はい、お手手で握手」


うん、やっぱり年齢が上がるとスタッフの指示もきちんと聞いてくれる。
あとは握手してお見送り……のはずだった。

その時。


「……ざけんなよ。友達に見られたらヤベーじゃん。なんでこんなのと写真」


えっ? 
ちょ、待って。今なんて言った!?
頭が混乱してる間に、男の子はニヤリと口角を上げた。


「おまえの正体、暴いてやるぜ!」


両耳をがっつり掴み、思いっきり引き上げた!


「絶対オッサンが入ってるんだろ! 俺は騙されねぇ!!」


ひぃぃぃぃ! 
この目、完全に子どもの目じゃない!
ギラギラ光って、魂どっか行っちゃってる! 悪魔か!? ホラー映画か!?


やめてぇぇぇ!! こっちは命がけなんだよ!


必死に頭を押さえるけど、このモフモフ手じゃ全然掴めない。耳の奥では親の怒声、スタッフの『離しなさい!』という叫び。
でも少年の力は異常なほど強く、頭パーツはグラグラ!

やばいやばいやばい、マジで首飛ぶ!


スポーーーーーン‼


世界が一気に明るくなった。
う、嘘でしょ……頭、抜けた!? 
ちょっと待って、これ本気でやらかした!?

私は反射的に首穴に顔をズボッ。完全に“カメ子”化。上目づかいで穴を見上げ、モフ手をバタバタ。


ポーーーン。


ウィルの顔が笑顔のまま宙を舞った。
いやいや、飛ぶな飛ぶな! 
しかも満面の笑みで!
ホラーかコントか分かんないよもう!

会場は一気に地獄絵図。子どもは泣き叫び、大人はざわめき、スマホを構える人までいる。

やめてぇぇぇ! これSNSに上がったら私の人生終了じゃん!

慌てて追おうと立ち上がった瞬間、悪魔の発泡草履が牙をむく。


ぐらっ……ドテーーン! ゴロンッ!


派手に転んで、モフモフの手足をバタつかせる首なしウサギ。

ちょっ……これ、完全に都市伝説になるやつじゃん! “首チョンパうさぎ”とか言われて語り継がれるんだ、絶対!

しかもよりによって、今は宿泊客がロビーに戻ってくる時間帯。

やめて、お願い、神様仏様ピーターズ様。どうか今だけ夢オチにしてください!