ドジっ子令嬢は着ぐるみうさぎに恋をする

衣装部屋――両サイドに更衣室、中央には着ぐるみや衣装がずらり。

でも、なんで今ここ? 私、あと15分でKAR開けなきゃいけないんですけど!?

入るなり、タオルと紐を持ったおばさんズ二人に更衣室へ連行……えっ、タオルと紐?

外からは鬼島チーフの低い声。


「おい、カメ子。よく聞け……」


ウィル役が体調不良でダウン、代役は私。
やばっ! 無理無理無理!!

タオルを胴にぐるぐる巻かれ、紐でキュッ。


「ちょ、待っ……グ、苦しい〜!」


おばさんズの勢いに逆らえず、更衣室を出される。

ソファーには消毒済みの“ウィルの抜け殻”。
サロペット型の下半身パーツ、厚底の草履、ブーツ。次々と装着され、相撲取り気分でドテッと腰掛ける。


「ぐへっ……苦しい……立ちたくない……」


渋々立ち上がろうとした瞬間、案の定グラグラ。倒れかけた背中を、ふっと支える大きな手。鬼島チーフが片手で支え、もう片方で腕を取る。

優しい。その手に デジャヴ。
あの日、私を抱きとめてくれたウィル。

心臓がドクン、と跳ねた瞬間。


「チッ! 下っ腹に力入れろ、ったく」


ガビーーン……なにもそんな言い方しなくても!

モヤモヤのまま、頭パーツがかぶせられ、視界が暗くなる。心臓の鼓動だけがやけに大きく響いていた。