ドジっ子令嬢は着ぐるみうさぎに恋をする

その日のウィルとラーラは広報部の社員さんたちが担当。私は広報部に途中入社したばかりの新人さんと一緒にKAR(キッズアクティビティルーム)を受け持つことになった。

午後1時にオープンし、数組の家族が訪れる。午後3時から1時間は一旦クローズして机やおもちゃを消毒し、午後4時からのミート&グリートに合わせて再オープン。これが平日の流れだ。

消毒を終え、社内メールを確認してKARへ戻ろうとした瞬間だった。


「はなむらーー‼︎」


背筋がピシッと凍る。久々に響いた鶴の、いや、鬼の一声だ。

ひ、ひぃぃ……また私、何かやらかした⁉︎

振り返ると、眉間にしわを刻んだ霧島チーフの鋭い眼光。


「チッ。遅い、カメ子! とっとと来い‼︎」


そう言い捨て、開いたドアからずんずん歩いていく。

待って待って、速い! 小走りで追いかけても全然追いつけない。

だってあの人、180cm近い長身で歩幅が倍。私の150cmの足じゃ必死のカメダッシュでも差が縮まらない。


「はぁ……はぁ……ヤ、ヤバ……倒れる……!」


やっと追いついたと思ったら、鬼島チーフは衣装部屋へ。

ドアは開けっぱなしで、中の様子がちらりと見える。

その場でぜいぜいと肩で息をしていると、
中から低い声が飛んできた。


「カメ子! トロトロすんな‼︎」


は、はいぃぃっ‼︎
心臓はバクバク、足はガクガク。
でも……なんでだろう。怖いはずなのに、あの低い声が耳に残って離れない。
私って危ない奴?

覚悟を決めて、大きく息を吐き、衣装部屋へ入った。