ドジっ子令嬢は着ぐるみうさぎに恋をする

たくさん練習してきたダンス。もう手慣れたものよ……と言いたいところだけど、なんかおかしい。

あれ? 腕……上がりすぎ?

私の両腕は、頭の上で手首をひねるような形になっている。腰も軽く落ちて、なんとも言えない……これって、阿波踊りっぽくない!?
横目でお姉さんたちを見ると、みんなは肩の高さで腕をスイングしてる。私だけ違う!

や、やばい……ズレてる!?

列の一番左にいる私は、右に並ぶお姉さんたちの動きをチラチラ確認する。
やっぱり違う。『ワン・エン・ツー』のはずが、もう『スリー・エン・フォー』に入ってる!

ちょっと待って、これ時差? 異世界転移!? まさかのパラレルワールド⁉︎

動揺していると、次のスイングアームの振りが来た。……が、私の腕はなぜか斜め前に伸び、腰もぐっと落ちて――何かをすくうような動きに。

これ完全にドジョウすくいやん‼︎

その瞬間、視界の端に鬼島チーフの姿。目が合った!

ひぃっ、やばい。確実に見られた!

頭が真っ白になった私の視界の端、大人たちが笑ってる。子どもたちは? えっ? 真似してる⁉︎ ドジョウすくいを!?

隣のダンサーお姉さんを見ると、ニコッと微笑みながら口パクで『いいよ、いける!』と。

マジで⁉︎ 

他のお姉さんたちも『大丈夫!』ってうなずいてるし、なぜか着ぐるみたちまでノリノリ!

恐る恐る客席を見ると……うわっ、マジアク課の先輩たちが! 男性陣は大ウケで椅子を太鼓のように叩いてる。それに加えて、女性陣はなぜか拳を振って応援モード。
いやいや、ちょっとそのテンションおかしくない!?

中央に目を向ける。いた、大和おじちゃまが客席で叫んでる。


「いいぞ〜! チビチビちなりお姉さん〜!」


……って、うそ⁉︎ 

圭衣ちゃまも音楽に合わせて踊ってる!


「リンリン、行けーーっ!」


やめてぇぇぇ‼︎

“リンリン”は私の幼少期のあだ名。
それ、今ここで叫ぶ!?

この圭衣ちゃまと大和おじちゃま。そもそも、ここにいるだけで目立つ超美男美女夫婦。それが全力で私を応援してくれるとか、もう穴があったら入りたい。

さらに左側に視線を向ける。うわっ、また見ちゃったよ、鬼島チーフだ。
しかも一緒にいるのは、さっき袖からチラ見えしていたあの四人組。

って……えっ? あの年配の男性、見覚えが……ああっ!

赤坂マリンホテルグループの社長・赤坂雄洋(あかさかたけひろ)さんじゃん!!

えぇぇぇーーーっっ!! 
やらかしたぁーーー!!!

視線の先、鬼島チーフが額に手を当てて目を閉じている。

あっ、これ、確実に(カミナリ)コース決定。