「おい」


ぶっきらぼうな声が、頭上からふってきた。

……せっかく無視してたのに。

でも、そのままシカトして行こうとした。

すると、腕をガシッと掴まれた。


「おい。待てっつってんだろ」

「……なんなのよ。あんたみたいな非常識者と話す暇なんてないんですけど」


そう、毒を吐く。だって本当のことだもんね。

こんな奴に構ってられない。

キッと睨んでも、黙る彼。


「……あの、さっさと離してもらえませんか?」

「ふーん……おもしろい女」

「はい?」


何を言ってるんだか。

意味がわからない。

全然腕を離してもらえないから、無理やり振り払おうとしたとき。

……彼に引き寄せられて、あごくいをされた。


「……へ?」


あまりにも突然のことに、おかしな声が出てしまった。

だ、だって、こんなことに免疫はないんだもん!

コレって……。

き、き……ききききキス……!?

あわてている私を対象に、彼は真顔でどんどん私に近づいてくる。

恥ずかしくて、目を閉じると──。


「へ〜。こういうことされたら、赤くなっちゃうんだ?」

「……へ?」


またまた私はおかしな声を上げてしまった。

彼は真っ赤になっている私の顔を見て、爆笑している。


「──っ!」


それが悔しくて、キッと睨みつける。

でも……。


「ふ、そんな可愛いことしていいのか?本当にキスしたくなるけど」

「は!?」

「なーんて、冗談だよ」

「もう!なんなのよ!」


ムカつくムカつくムカつく!

余裕のある感じがめっちゃムカつく!

本当になんなのよ!?あの上から目線!!

物理的にも心理的にも……!