東京の雑多な路地に佇む小さな事務所。

 そこは、もう深夜だというのに明かりがついていた。

行政書士の仕事が終わると、デモ活動の準備の為の事務所になるのだ。

そこは足の踏み場もないくらい、散らかっていた。

床に「女性スペースを取り戻す会」のプラカード試作用紙が落ちていて、
壁には「#WomenReclaimSafety」と書かれた横断幕のデザインがピンで留められている。

優美はノートパソコンに向かい、来週の全国デモのスピーチ原稿を推敲していた。

画面には「安全は私たちの権利」と力強いフォントで書かれたスライドが映っている。
 
隣には署名運動の書類が山積みだ。

 時計はもうすぐで翌日になろうとしていた。

白いブラウスにデニムのスカート、という服装の優美。

彼女は少し席を立ち、オフィスの冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出した。

母からもらったエメラルドが埋め込まれたピアスを揺らし、コーヒーを一気に飲み干す。