響け、希望と愛の鐘

デモ当日、代々木公園は300人以上の参加者で埋め尽くされていた。

 ピンクのプラカードが風に揺れる。

「#WomenReclaimSafety」のTシャツを着た若者、シングルマザーの支援者たちが集まる。

 仮設ステージの前で、ボランティアの奈穂がプラカードを配り、相沢さんがSNSライブのカメラをセットする。

奈穂が笑う。

 「優美さん、めっちゃたくさんの人!

 人気アイドルグループのコンサートよりすごいよ!

 これ、絶対バズるよ!」

「おっと、優美ちゃん。

 今日、ヒーロー確定だねぇ!
 世界トレンド、狙っちゃうよ!」

 安達にこのこの、と小突かれる。

 いつもの光景に、思わず笑みが溢れた。

 優美はステージに立ち、マイクを握った。

「みんな、ありがとう!

 私、御劔優美。

 痴漢、ストーカー、監禁……怖かった。
 
でも、みんなの声が、私をここまで連れてきた。

 私たちは一人じゃない!

 女性の安全、すべての人の安全は、私たちの権利!」

観衆の拍手が響き、プラカードが一斉に掲げられる。

 「安全は私たちの権利!」の声が公園を震わせる。

 SNSでは、#WomenReclaimSafetyが急上昇し、ライブ配信に世界中からのコメントが殺到した。

『日本から、世界を変えよう!』

 『優美さん、最高!』

だが、後方でざわめきが起きた。

自由空間の会の残党が、プラカードを手に現れる。
『ジェンダーフリーを!』『女性専用スペースは差別!』

プラカードを持っていたのは2人。

何だか残党と言うには悲しい人数だ。