響け、希望と愛の鐘

東京の代々木公園は、夜の静寂に包まれていた。

 翌日は「女性スペースを取り戻す会」の全国デモ。

 300人以上の参加者が集まる予定で、ピンクのプラカードが準備テントに積まれている。

 優美はテントの中で、スピーチ原稿を手に震えていた。

白いブラウスにイエローのプリーツスカート。

母からもらった誕生石のピアスが揺れる。

 監禁の恐怖、佐藤健太のナイフ、トラウマのフラッシュバック――それらを乗り越え、優美はここまで来た。

 だが、自由空間の会の残党からの脅迫メッセージが、彼女の心に影を落とす。

スマホには賛同者の応援が溢れる。

『優美さん、明日、絶対行く!』『#WomenReclaimSafety、世界に届け!』

 だが、匿名アカウントの嫌がらせも止まない。

 優美は深呼吸し、原稿を読み直した。

 「私たちは一人じゃない。安全は私たちの権利」。

ハギくんがテントに飛び込んでくる。

「優美先輩!
 
麗眞さんの秘策のおかげで、自由空間の会の残党、のメンバーが一気に減ったみたいです!

絶対近づけさせない!」

「ありがとう。
 ……でも、怖いよ。

 明日、ちゃんとできるかな」

優美の声が震える。

 ハギくんが真剣な目で言う。

 「先輩、監禁も乗り越えたんだ。

 俺、弁護士として、ずっとそばにいるよ」

優華がテントに入り、自信たっぷりの笑顔で割り込む。

 「姉ちゃん、ビビってんの?

 らしくないなぁ。

 私も応援、頑張るよ!

 明日、バズるの間違いなしでしょ!
 自信持ちなよ!」

「ふふ。
 ありがとう。

 優華、アンタの明るさ、ほんと助かる。
 優華が妹で、良かったよ」

優美は笑い、姉妹の絆を感じた。

ハギくんと優華の存在が、彼女の心を支えていた。