響け、希望と愛の鐘

店を出た後、優美とハギくんは夜の街を歩いた。

 東京タワーの明かりが近くに見える公園のベンチに、2人で腰掛けた。

 優美はポツリと本音をこぼす。

「ハギくん……

 私、監禁の後、夜、眠れないの。

 佐藤のナイフ、ブラウスのボタンに手がかかったときの恐怖。
 
それが全部蘇ってくるのよ」

矢萩が足を止め、真剣な目で言う。

 「恐怖した経験を素直にこうして吐き出すのも大事です。

 全部一人で抱えると、辛くなります。
 
俺、そばにいますから。

 麗眞さんが、テスト感覚で優美がカウンセリング受けてみたら?
 って言ってましたよ。

 弁護士なので、法廷で両親には会ったことがあるんです。
 両親の精神的な強さは、しっかり優美に受け継がれてます。
 だけど、人間、そこまで強くない。

 監禁された後、心に傷が残らない人間のほうが、どうかしてますよ」

優美は涙をこらえ、頷いた。