響け、希望と愛の鐘

「優美先輩、頑張りすぎです。デモの前に倒れたら元も子もないですよ」


優美は小さく息をついて、笑った。

 「仕方ないわね。
 少しだけよ?」


 真さんのカフェは、事務所から歩いて10分の静かな路地にあった。
 
カフェに入ると、真さんとその奥さん、麻紀(まき)さんがいらっしゃいませ、と迎えてくれた。

「久しぶりね!
 
デモも、真さんと2人で動画見て、応援してるのよ。

 今日はゆっくりしていってね」

 優美と矢萩は、カウンター席に並んで座った。

 麻紀さんがメニューを渡してくれたので、季節限定のパンケーキを選ぶ。
 
ハギくんはティラミスだ。

 木の温もりに溢れる店内には、コーヒーの香りが漂い、窓からは東京の夜景が覗く。

 
 麻紀さんが笑顔でコーヒーとクラウンメロンパンケーキ、ティラミスを運んでくる。

「優美ちゃん、ハギくん。

 デモの準備も大変だね。
 
たまには、こうしてひと息つく時間も大事だよ。

 誰かのこういう光景を見てるのは心が洗われるねぇ」

「真さん、からかわないでください!

まだ私たち、デートするような関係じゃないですって!」

 優美が顔を赤らめる。

「真さん、麻紀さん!
 
コーヒー、今日もいい感じです!

 俺は嬉しいですけどね。
 
優美先輩と、こうしてゆっくり話す時間、欲しかったんですよ」

優美はコーヒーを飲み干し、肩の力を抜いた。

 監禁の恐怖、佐藤のナイフ、トラウマのフラッシュバック――

それらが遠く感じる瞬間だった。