大きなリムジンに乗せられて、たどり着いた先。

それは、テーマパークいくつ分あるんだ、というくらいの広い屋敷だった。

 大きくて重い扉を開けると、懐かしい声に抱き締められた。


グレーのスカートスーツに、ブルーストライプのシャツ。
 キラリと胸元に弁護士バッジが光る。
 
母親の華恵(はなえ)だ。

 チャコールグレーのスーツに、スカイブルーのネクタイ。

 心からホッとしたような表情をしながら、目の奥は笑っていない。
 
父親の優作(ゆうさく)だ。
 

「顔を見せられなくて、すまないと思っていた。
 無事で、本当に良かった。

 万が一のことがあったら、問答無用で被疑者を無期懲役にしていたところだ。
 
まぁ、そこまでしたら検察官の職権濫用になるがな」

「優美も、優華も、本当に無事で良かったわ。
 
優華に任せっきりで、ごめんね。

優美のデモは、スピーチ動画までいつも見てるわ。
 どこでもトレンド1位になってて、さすが私の娘ね」

 私の横で、きっちり45度に頭を下げているのが、ハギくんだった。

「何、頭下げてんのよ」

「将来的に、お義父さんとお義母さんって呼ばせていただくかもしれないですからね。
 
今のうちから、友好な関係を築いておかないとですし」

「矢萩、気が早すぎ。
 まったくもう。

 まだ、矢萩とはそんな関係じゃないし。

 ……今はまだ、ね?」

優美の顔に、少し笑顔が戻った。

その日は、宝月の屋敷の一室で、家族水入らずで過ごした。

「よく頑張ったわ。

優美も、優華も。
 
願わくば、私や優作がもっと力になれればよかったわ。

  ……ごめんなさい。
 貴女たちの親失格ね」

「時々、蓮太郎(れんたろう)に無理を言って、この屋敷に上がって音声だけは聞かせてもらっていたんだ」

 蓮太郎(れんたろう)さん。
 麗眞さんの父親だ。
 
両親とは幼なじみであるらしい。