響け、希望と愛の鐘

 ナイフはロープを切り、優美の両手が自由になった。

 切られたロープを軽く佐藤の方向に蹴ると、ロープに躓いた佐藤がよろけた。

その一瞬の間に、優美は倉庫の隅に逃げた。

ずっと倉庫の入り口を見張っている男は、危害を加えてこない。

それどころか、すれ違いざまに、早口で優美に告げた。

「あと10秒、耐えてくださいませ、
優美さま。

麗眞さま、矢萩さま、優華さまが向かっております」

昔、会ったことのある男の声だ。

そう言うなら、何としてでも耐えてみせる。