響け、希望と愛の鐘

『怖い……

 でも、負けない……!』

優美は心の中で呟き、佐藤を睨んだ。

彼女の目に、微かな力が宿る。

佐藤がナイフを振り上げる。

だが、優美はロープを擦り続け、わずかに緩める。

 「佐藤。

 アンタ、ほんと……哀れね」

佐藤の動きが止まる。

 「何!?」

「貴方、仲間から認められたい、って言ってたわよね。

 自由空間の会に利用されてるだけって気付かない?

聞いたわよ。
 
自由空間の会の人間は、リーダーの金目当てで集まっている連中なんでしょ?

自由空間の会のために、辞めたくもなかった仕事を辞めてまで関わっている人も大勢いるとか。

 その人たちも、可哀想よ。

いくら人手不足の世の中といえど、そんな理由で辞めた人を、会社が再び雇ってくれないものね?」

優美の声は震えていたが、佐藤の弱点を突いた。

 佐藤の顔が歪む。

 「黙れ!

 お前が俺をこうさせた!」

「違う。

 貴方が自分で選んだの。

 私は、人を服従させる特殊能力とか、持ってないからね?

 そんな能力はまっぴらだしね。

 持つなら、優華みたいに動植物と会話して仲良くなれる、みたいな可愛らしいやつがいいわ。

恨みつらみなら、暇だからいくらでも聞いてやるけど」

優美の言葉に、佐藤が激昂する。

 「お前!
 その達者な口、黙らせてやる!」

彼がナイフを振り下ろす瞬間、優美は身体を捻った。