響け、希望と愛の鐘

佐藤がナイフを取り出し、優美に近づく。

「お前のせいで、俺は笑いものだ。
 
2年前、お前が依頼を断ったから、仲間から見下された。
 
そんな時、自由空間の会が俺を雇ってくれた。

 怖かっただろう?」

優美は恐怖で震えながら、目を逸らさず佐藤を見つめた。

 「アンタの恨み、私には関係ない!

自業自得よ!

 私は戦う!」

佐藤は続ける。

『お前の家、毎晩見てた。

 チラシを破って、写真を刺して、怯えるお前が面白かった。
 
デモで目立つたび、俺の怒りは増した。


 そんな感情を、抱かなくて済むんだ。
 
お前さえいなくなればな」

振り下ろされたナイフが優美の頬に近づく。

 彼女はロープを擦り、逃げ道を探す。

 だが、過去のトラウマ――
高校時代の痴漢被害、バイト先でのストーカー……

それらが脳内にフラッシュバックし、呼吸が乱れる。
 
書店で触られた感触、誰も助けてくれなかった夜。

就職活動の最中、初老の男に「彼氏いるの?」と、ベンチでピッタリ隣にくっつかれて話しかけられた思い出。