響け、希望と愛の鐘

スマホのライトを点けると、ドアの隙間から黒いフードの男が覗いている。

 佐藤だ。

ドアが蹴破られ、佐藤が飛び込んでくる。

 背後からもう一人の男――

 佐藤の雇った仲間が現れ、優美の腕を掴む。

 佐藤の目は、憎しみと狂気でぎらついている。

「離せ!
離せよ!」

「目立ったお前が悪い。
 
静かにしろ、御劔 優美」

佐藤の声に、優美は聞き覚えがあった。

 「佐藤……

 アンタ、なんでこんなこと……」

「黙れ!

 お前のデモが、俺たちの声を潰してる!」

優美はデスクの椅子を男の方へと投げつけ、逃げようとした。

だが、一歩遅かった。

背後の男が素早く動き、薬品が染み込んだ布を彼女の口に押し当てる。

 鼻を突く匂いに、意識が薄れる。

 佐藤が低く笑う。

「お前があの依頼を断らなければ、
 
こんな目に遭わずに済んだんだぞ。

 恨むなら、あの頃の自分を恨むんだな」

優美の体が崩れ落ち、暗闇に沈んだ。