響け、希望と愛の鐘

福岡デモの後、優美は東京へ戻る新幹線の中で、ハギくんと優華にビデオ通話をした。

「優美先輩、福岡もバズったっす!
 
でも、ハッキング、めっちゃヤバい。

でも、俺が守りますから。

矢吹(やぶき)さん、
 って、あ、例のペンタゴンにいた人なんですけど。
 快く協力してくれる、って言ってくれましたよ!」

 優華が割り込んだ。

「え?

矢吹さん?

彼、元気そうでした?
 
私も優美も、昔ですけど矢吹さんに会ったことありますよ!
 
何せ、矢吹さんは自分が仕える主だった(あや)さんとラブラブですからね!

羨ましいです!

 早く、姉ちゃんと矢萩さんも付き合っちゃえばいいのに!
姉ちゃんと矢萩さんなら大歓迎!

それにしても、佐藤ってやつ、ほんとキモいね。

 東京戻ったら、私が守るから!」

「ふふ。

 ありがとう、2人とも」

 余計な一言が多かった優華。
 
それが優美の心を少し楽にしてくれた。

だが、心の奥では恐怖が渦巻く。

 佐藤の次の行動が、すぐそこに迫っている気がした。

 彼女はスピーチ原稿を握り、呟いた。

 「怖くても、止まれない。

 私たちの声、届けなきゃ」

新幹線の窓に映る自分の顔は、疲れていたが、目に力が宿っていた。

 優美は決意を新たにした。

 だが、東京の事務所で、佐藤が彼女を待っていることを、彼女はまだ知らなかった。

 新幹線の窓に映る東京の夜景は、優美の疲れた顔を映し出していた。