響け、希望と愛の鐘

その夜、ハギくんと優華が優美をマンションまで送った。

 優華は肉親であり、もう指紋認証も虹彩認証も済んでいる。

ハギくんの分だけ、完了させる。 

ハギくんは駐車場を警戒する。

 部屋に入ると、優美は二人にコーヒーを出し、ソファで話した。

「それにしても、
 指紋と虹彩認証までされなきゃいけないなんて、
 
どんなセキュリティーなんすか、この家。

それでも、優美先輩がここまで怖い思いするって、相当ですよ。

優美先輩、俺、絶対守りますから! 」

「姉ちゃん。
 私の魔力、まだ残ってるんだからね!
 
ストーカーなんか、秒でやっつける!」

二人の優しさが心にしみて、優美はようやく笑顔を見せた。

 だが、深夜2時、インターホンが鳴った。

 優美が飛び起き、窓を覗くと、駐車場に佐藤が立っていた。
 手に持った懐中電灯が、優美の部屋の窓を照らす。

「優華ちゃん、警察呼ぼう!
 優美先輩、俺、証拠撮ります!」

ハギくんがスマホで佐藤を撮影した。

 その数秒後、パトカーのサイレンの音が近づく。

 佐藤の気配が消えた。

 逃げたのだろう。

「ドローンがきっと、自動で警察に通報してくれたのね。
 
佐藤の姿を、ドローンはここ数日、毎日のように捉えてるからね。
 
要注意人物として、マークしてるはず!

 姉ちゃん、私もいるから、ストーカーなんて絶対捕まえてやる!」

 「優華ちゃんの言う通りですよ。

 とりあえず、優美先輩は寝てください。
 身体壊します」

「ありがと。

 アンタたち、ほんとバカね」

優美の声は震えていたが、心は温かかった。

ストーカーの恐怖は続くが、ハギくんと優華の存在が、彼女に希望を与えていた。