響け、希望と愛の鐘

 佐藤 健太(さとうけんた)

2年前に優美が断った依頼人だ。

佐藤はニヤリと笑い、指で首を切る仕草をして歩き去った。

恐怖で体が凍りつく。

翌朝、優美は玄関ドアに新たな異変を見つけた。

 ドアノブに、彼女のスピーチ写真がテープで貼られ、赤いペンで目が塗り潰されていた。

 隣には「今夜、お前を連れていく」と書かれたメモ。

 優美の瞳からは涙がこぼれた。

 自分の家が、安全な場所ではなくなっていた。

朝になり、事務所に出勤した優美は、疲れ果てた顔でデスクに座った。

そこへ、スーツ姿の矢萩 裕貴が飛び込んでくる。

手に持ったコンビニの袋から、いちごサンドとハムサンドの匂いが漂う。

「優美先輩!

 警察に監視カメラの映像、提出してもらいましたよ!

まだハッキリした証拠はないですけど、俺、ガッツリ追いますから!」

「矢萩……ありがと。

 でも、昨日も家に来てた。

 写真が、ドアに貼られてて………
 赤いペンで目が塗り潰されてて。
 どうしよ……
 怖いよ」

優美の声が震える。