「茄子川くーん?!どこに行ったのー?」

 茄子川君を途中で見失い、名前を呼んで探す。すると。

『バウッ!!!』
「うわあああ助けてーー!!」

 茄子川君は、散歩用のロープを引きずったブルドックに追いかけられ、私の方に向かって走ってきた。

「あ、あの犬が俺のことを食べようとするんです!」

 そう言いながら、息を切らせた茄子川君は私の胸にぴょんと飛び込んできた。

『ヴーッ!バウバウッ!!』
「ひいっ!」

 私の足元で、茄子川君に向かって吠えるブルドック。すると私は。

「あっち行きなさい!!ガルルルルッッ!!!」

 歯をむき出しにしてブルドックに威嚇すると、ブルドックはキャウンキャウンと怯えた声で鳴きながら、後ろから追いかけていた飼い主らしき人の方へと走っていった。

「大丈夫?茄子川君。あの犬にかじられなかった?」
「大丈夫ですけど……情けないなぁ……俺」

 私の胸の中でふるふると震える茄子川君。

「先輩とHさえしなければ、こんなことにはならなかったのに……」
「茄子川君……」
「俺のこれからの人生、どうやって生きてけばいいんですか?」
「ごめんね……」

 まさか、こんなことになるなんて思わなかったし、分かるわけがない。ただ、好きな人と、茄子川君と身体を重ねたかった、それだけだったのに。私とHしたせいで、茄子川君が茄子になってしまうなんて……

 胸の中で震える茄子川君をぎゅっと抱きしめながら、謝っていると。

「……とってください」
「……え?」
「責任とって、俺と結婚して、俺のずっと傍にいて下さい!」
「えっ……ええええ!!!?」