「ほおぉ~……!これは『茄子変化症候群』じゃないですかっ!!」
とりあえず病院に行き、医者に診てもらうと、医者が興奮気味にそう言った。
「な、なすへんげ症候群?なんだそりゃ!?」
「あの~……それは一体……」
「これを発症している人は、これまで世界に10人もいない、非っ常に珍しいものなんですが~……まさか、目の前で見れるとは……驚きです!」
医者は鼻の穴を広げながら、茄子川君の身体をまじまじと見た。
「あの!そんなことより、俺……もとに戻りますよね?てか、何で俺茄子なんかに……?」
私の膝の上でちょこんと座りながら、真面目な声色で医者に聴く茄子川君。
「う~ん……あまり事例が無いのでなんとも言えませんが……まれに、茄子のDNAを持っている人間がいて、そしてその茄子のDNAを持ったもの同士で性行為をすると、その茄子のDNAを多く持ってる方が、茄子に変化する……と、現段階の研究結果で発表されてはいますが~……」
「何故茄子……?」
「茄子だけではなく、他にもきゅうりやトマト、人参などがあります。一番多いのは人参ですね。といっても、やはり世界に十数人くらいしか、発症している人はいませんが」
「そんなことより!俺のこの茄子の身体は……?もとに戻りますよね?」
私の膝の上で、茄子川君は声を震わせながら言った。
「……すみません。残念ながら、もとに戻す方法が今のところ見つかってなくて……」
「そん……な。俺、この茄子の身体で、生きなきゃいけないんですか?」
「はい……」
茄子川君は黙ったまま、私の膝の上でふるふると身体を震わせた。そして。
「くそおおおおおお!!!」
突然、茄子川君は大声をあげると、私の膝の上からひょいと飛び降り、パタパタと診察室から出ていった。
「ちょっ、茄子川君!?」
私は急いで、茄子川君の後を追った。



