色褪せて、着色して。~番外編~

「マヒル様・・・?」
 さっきまでピアノを弾いていたはずのマヒルが目の前に立って…
 いや、目の前に立っているのは髪の短い男だ。
 年は20代後半だろうか。
 澄んだ青い目に。
 この国では珍しいであろう金色の髪の毛。
「マヒル様のお兄様ですか?」
 スズメの言葉に、ぶふっ…と鎧兜の男は声を出して笑った。
「そうか…頭脳班の人間は知らないのか」
「え、どこかでお会いしていますか?」
 スズメはもう一度、鎧兜の男を見つめる。
 綺麗な顔立ちをした人だ。
 見たことがあるなら、必ず覚えているはず…

「まあ、俺と姫君が血が繋がっているのは間違いないな。これで誤解は解けただろう?」
「へ?」
 まぬけな声を出したかと思うと。
 スズメはまばたきをして、「あー」と叫んだ。
 後ろに下がると、跪いて。頭を下げる。
「へ、陛下・・・?」
 震えるスズメの声に、鎧兜の男はぶふふと声に出して笑った。
「おまえに愛人呼ばわりされて、姫君はだいぶ傷ついているというのを聞いたからな」
「申し訳ございません」
 スズメが頭を下げる。
「おまえは、愛人の子。父親は肉体班のカラス。兄貴はタカ」
「はい」
「まあ…おまえが愛人という存在が気にくわないっていうのは、わかるさ。苦労した母のようになってほしくないと思ったんだろ」
「すいません。勝手に思い込んでいました。まさか、マヒル様と陛下が…そんな」
 スズメは地面に額を当ててまで、頭を下げた。

「頭を上げろ」

 降ってきた言葉に、スズメはゆっくりと頭を上げる。
「悪かったな、スズメ」
「へ?」