色褪せて、着色して。~番外編~

「スズメ様、本日はこれより王家の礼拝堂に向かいます」
 ふんわりとした口調で言うのはマヒルの侍女、バニラだ。
 スズメがマヒルの護衛になって一か月が経った。
 ようやくお出かけといったところだろうか。

 馬車を手配して。
 マヒルが馬車に乗り込むのを確認すると。
 スズメは御者の隣に座った。

 王家の礼拝堂というのが、どこにあるのかわからなかったが。
 馬車は迷うことなく進み。止まると。
 マヒルが飛び出すように降りたので、スズメは慌てて追いかける。

 辿り着いた礼拝堂はこじんまりとしていた。
 中を覗くとグランドピアノが一台。
 長椅子が4つほどしかなかった。

 誰の姿もなかった。
 マヒルは誰がいないにも関わらずピアノを弾き始める。
 スズメはドアの前で立つことにした。
 ドアは全開である。
 姿を現さないが、人の気配は感じる。
 背筋を伸ばして、スズメは護衛することに集中する。

 聞こえてくる曲は暗く悲しい…とスズメは感じた。