色褪せて、着色して。~番外編~

 その日から、スズメはサンゴの元で修行をするという形になった。
 何故、こんなことになっているのか。
 展開が早すぎて、スズメはついていけない。
「おい、起きろ」
 サンゴの家に泊まらせてもらったのは良かったものの。
 まだ日の出ぬ前に起こされた。
「制服は着なくていい。これを着ろ。支度が終わったら畑に来い」
「ふあい」
 修行というから、てっきりランニングでもするのかと思っていたら。
 スズメは鎌を持たされて、草むしりをやれと命令された。

「草むしりが終わったら、家に戻って朝食。それから、武術の訓練。終わったら…」
 分単位のスケジュールに文句を言いたくなったが。
 スズメは「御意」と頷くだけだ。

 3日間は、畑仕事の手伝いとサンゴから武術の訓練を受ける。
 朝から晩まで、みっちりと働いているせいか夜は気絶するように眠った。

 4日目になると、流石にスズメは慣れた。
 早起きして、野菜の収穫をしているとサンゴに言われた。
「おまえ、血統がある割には畑仕事に慣れてるよな?」
 血統がある…というサンゴなりの配慮を込めた言葉にスズメは苦笑する。
「小さい頃。近所に住んでたじいちゃんやばあちゃんの畑仕事を手伝ってたんで」
「そうか」
 実の父親が貴族で肉体班の上層部。
 その馬鹿息子も貴族。
 ハヤブサなら畑仕事なんてしないだろう。
 世界が滅亡しかけたら、絶対に俺の方が長生きするだろうな。
 トマト片手に、スズメはそんな想像をするのであった。