色褪せて、着色して。~番外編~


















おいしそうな匂いがする。
 スズメは目を覚ました。
 目の前に、見知らぬ少年がスズメをのぞき込んでいる。
「ひいっ」と声を漏らしてスズメは驚くと、少年はどこかへ行ってしまう。

 スズメはゆっくりと起き上がる。
 誰かが毛布をかけてくれたらしい。
 すっかりと辺りは暗くなっていて。
 部屋の真ん中で、焚き火をしているではないか。
 火の上には鍋が天井から吊るされていて。何かぐつぐつと煮えている。

「おう、起きたか」
 少年と共にやってきたのはサンゴだった。
「夕飯にすっから。座れ」
「え、あ・・・」
 言われるがまま、鍋の前に座ると。
 少年が鍋に入った料理を皿によそってくれた。
 周りを見て、判断するに。
 スズメはサンゴと戦っている最中、
 ボッコボコにされて気絶したらしい。
 少年が介抱してくれたようだ。
「あの、俺。一度、宿舎に戻らないと…」
「あ?」
 サンゴは低い声でスズメを威嚇する。
 サンゴの隣に座っていた少年がスケッチブックを手に取って何かを書き込んで。
 サンゴに見せた。
「怖いって? ああ、すまん」
 殺気を出していたサンゴは、少年に笑顔を見せる。
 あ、ちゃんとした人間だ。
 と、サンゴは胸をなでおろす。
 本気で消されると感じたからだ。
「おめえの上司、マキだっけ?」
「え? 俺、言いましたっけ?」
 スズメが驚くと、少年が声を出さずに笑い出した。
 そして、スケッチブックに何かを書き出して、スズメに見せた。
「サンゴさんはえいゆうだから顔が広い」
 と書いてある。
「マキには電話しておいたから、安心して。ここにいろ」
「はい!? え、電話ってこの家に電話あるんですか」
 地べたに座って。
 部屋の真ん中で焚き火しているような家に電話があるのか?

 スズメを見て、また少年が笑う。
 少年を見て、サンゴはげんなりとした表情を見せる。
「まあ、とりあえず飯を食え」