色褪せて、着色して。～番外編～

　トペニの教育係のことは、ほうっておいて。
　スズメは日常の仕事に没頭した。
　感情を排除して仕事するしかなかったからだ。
　だが、マキ室長に呼び出された時は父親が絡んでいるのではないかという気がした。
「本日付けで、君は肉体班に移動してもらう」
「……」
　御意…と言えなかった。
　スズメは、じっとマキ室長を見た。
「父ですか？」
　思わず出た言葉に、マキ室長は頬杖をついた状態でスズメを見ている。

「父ですよね。俺が肉体班に戻れるわけないですから」
「残念ながら、ある方の要望でね」
「ですから、父ですよね？　あの人ですよね」
　あの人とスズメが親子というのは周知の事実である。
　そして、異母兄弟のタカの存在も皆、知っているはずだ。

　父は肉体班の上層部の人間。
　異母兄のタカも肉体班のお偉いさんに仲間入りしている。
「君はさ、頑張ってる」
　スズメの質問には答えずにマキ室長は立ち上がった。
「もう、いいじゃないか。戻っても誰も文句は言わない」
　言うに決まっているだろ。

　喉元まで出た言葉を。
　スズメは飲み込んだ。