夏の終わりを告げるように、空には大きな花火が咲いていた。
大学の友達みんなで行った夏祭り。
君は子供みたいに、屋台の焼きそばとりんご飴の袋をぶら下げて、目を輝かせてた。
君は他の子と合わせて、淡い水色の浴衣を着てきた。
いつもはまっすぐ下ろしてる君の髪が、今日は綺麗にまとめてあって、
知ってるつもりやったけど、まだまだ知らんことがいっぱいあって、ちょっとだけ苦い気持ちになった。
君は構わず屋台に夢中で、人混みの波に飲まれそうになるから、
俺は心配になって、そばを歩いてた。
「前、つかえてるで」
「ね、はぐれそう」
君がそう言うた時、前に行く友達の背中はもう遠くなってて、
屋台の明かりと浴衣の人混み、花火の音で耳の中がごちゃごちゃしてた。
人の流れが大きく揺れた瞬間、君の肩が誰かにぶつかりそうになった。
思わず手を伸ばして、君の手首を掴んだ。
「危ないで」
「……うん」
振り返った君の顔が、提灯の光に照らされてほんのり赤くなってた。
手首を離して、俺の手を君の方に差し出すと、
君は下向いたまま黙って手のひらを重ねてきた。
声はないのに、はっきり伝わってくる。
祭りのざわめきと花火の音が、いつもの自分よりも大胆なことをさせる。
人混みのざわめきと花火の破裂音が、心臓の音を隠してくれて、
何を話したかなんて、何も覚えてない。
覚えてるのは、花火の残り火と、
あの時、確かに君が俺の手を離さなかったことだけ。
花火が終わっても、手のぬくもりだけが、ずっと指先に残ってた。
大学の友達みんなで行った夏祭り。
君は子供みたいに、屋台の焼きそばとりんご飴の袋をぶら下げて、目を輝かせてた。
君は他の子と合わせて、淡い水色の浴衣を着てきた。
いつもはまっすぐ下ろしてる君の髪が、今日は綺麗にまとめてあって、
知ってるつもりやったけど、まだまだ知らんことがいっぱいあって、ちょっとだけ苦い気持ちになった。
君は構わず屋台に夢中で、人混みの波に飲まれそうになるから、
俺は心配になって、そばを歩いてた。
「前、つかえてるで」
「ね、はぐれそう」
君がそう言うた時、前に行く友達の背中はもう遠くなってて、
屋台の明かりと浴衣の人混み、花火の音で耳の中がごちゃごちゃしてた。
人の流れが大きく揺れた瞬間、君の肩が誰かにぶつかりそうになった。
思わず手を伸ばして、君の手首を掴んだ。
「危ないで」
「……うん」
振り返った君の顔が、提灯の光に照らされてほんのり赤くなってた。
手首を離して、俺の手を君の方に差し出すと、
君は下向いたまま黙って手のひらを重ねてきた。
声はないのに、はっきり伝わってくる。
祭りのざわめきと花火の音が、いつもの自分よりも大胆なことをさせる。
人混みのざわめきと花火の破裂音が、心臓の音を隠してくれて、
何を話したかなんて、何も覚えてない。
覚えてるのは、花火の残り火と、
あの時、確かに君が俺の手を離さなかったことだけ。
花火が終わっても、手のぬくもりだけが、ずっと指先に残ってた。



