君と進む季節

春の終わり、新学期も少し落ち着いてきた頃。
みんなでよくわからない集合写真を撮った帰り道、
ふと君のカーディガンに桜の花びらが落ちているのを見つけた。

「花びら、ついてるで」
軽く声をかけて、そっと手を伸ばす。

君はちらっと見て、ほんの少し肩をすくめて、
「気づいてた」って顔をした。

手が君の髪に触れてしまい、花びらが落ちる。
何でもない瞬間だけど、心に残っていた。

そんな余韻を感じながら帰り道を歩いていると、
君は俺と同じ路線の電車に乗ってきた。

「帰り道、こっちなん?」
「そうだよ、知らなかった?」

偶然、二人分の席が空いて
「座る?」って聞いたら
君は少し笑って
「座ろっか」って返した。

静かに進む電車の中で、俺は無意識のうちに窓に映る君の顔をじっと見ていた。
ほんの少しだけ伏し目がちで、まつげが長くて、揺れと一緒に動く髪が優しく頬を包んでいる。
窓の中の顔に見惚れていると、ふいに視線を感じた。
「どこ見てるの?」と君が笑いながら俺の目を覗き込んできた。

その一瞬、心臓が一拍大きく鳴る。
「景色」って言ってごまかしたけど、
まるで全部見透かされているみたいで、顔が赤くなっているのを感じた。

君は何も言わず、からかうように目を細めた後、視線をそらした。

まだ言葉にできない、この気持ちが、胸の奥でじわじわと広がっていく。
この静かな時間が、永遠に続けばいいのに、
そう思いながら、俺はそっと視線を窓の外に移した。