★三話『変わらないモノ』
──居酒屋・『おりおん』──(夜)
・メンバーで楽しく食事を楽しんでいる。
海莉「へぇ~、じゃあ花ちゃんは中学の時から脚本に興味あったんだ」
花「はい。いつか映画作りに携わりたいって思っていたので、こうやってサークルに参加させて頂けてすごく嬉しいです」
海莉「ほんと助かる、脚本って誰でも書けるわけじゃないからさ~」
仙道「そうだね。去年はいなかったから、怜のシナリオでいったんだ」
花「視聴覚室に置いてあった作品ですか?」
仙道「よく知ってるね」
花(怜の書いた脚本で作った映画が『線香花火の夜に』なんだ)
仙道「怜のシナリオも良かったけど、怜は次回作は監督兼カメラマンに全力注ぎたいって言ってたから」
仙道「有瀬さんが書いてくれるなら助かるよ」
・クールに話しつつ、ふわりと微笑む。
・大人な雰囲気に思わずドキッとする花。
花「ご期待に添えるよう頑張ります」
・その時、椿姫が口を開く。
椿姫「──怜以上のシナリオなんてそうそう書けないと思うけど」
花(え……っ)
花(いま、なんて)
椿姫「さっき、小さい頃から映画が好きって言ってたわよね。ここにいるメンバー全員映画好きなの。そんなの当たり前だし、いちいち言うことでもないと思う」
椿姫「あと心に届く脚本書きたいから頑張るって、努力するのも当たり前」
海莉「ちょっと椿姫」
椿姫「ここは仲良しサークルじゃないから」
怜「……」
花「……肝に、命じます……」
・椿姫は花をじろりと睨むとビールを飲み干す。
椿姫「海莉、ビールもう一杯」
海莉「えっ! もう三杯目だよね?!」
怜「海莉、椿姫に水」
椿姫「怜、何でよっ」
怜「お前は飲み過ぎると色々良くないから」
椿姫「色々ってなによ」
怜「とにかく水な。わかった?」
・二人の雰囲気に何かを感じ取る花。
花(この二人って……どういう関係なんだろう)
花(でも怜は別の彼女がいたみたいだし……)
笑里「海莉先輩ちょっとどいてくださ~い」
・笑里がそういうと席を立つ。
海莉「え、なになに?」
・笑里は海莉と花の間に座る。
笑里「花ちゃん、LINE交換しよ」
花「えっ、いいの?!」
笑里「笑里ね、ずっと同い年の友達欲しかったんだ~」
花「私も! まだ友達っていえる友達がいなかったから嬉しい」
笑里「花ちゃんも、笑里って呼んでね」
花「うんっ」
・二人はニコニコしながらLINE交換する。
笑里「『REI』のグループLINEも招待するね」
花「ありがとう」
・すぐにLINEに招待メッセージが来る。
・花は参加する。
・その時、怜のアイコンが見える。
花(あ……怜のアイコン……線香花火)
花(海辺で一度だけ、怜と花火したな)
花(最後、どっちが線香花火もつか勝負したのが懐かしい……そしてそのあと──)
※過去に二人が初めてキスをしたことを絵で読者提示。
・そこへ追加の料理が運ばれてくる。→だし巻き、唐揚げ、山芋の天ぷら。
店員「ラストオーダーになりますが、追加のご注文はございますか?」
海莉「いや、これで大丈夫です」
・みんなで食べることに。
笑里「取り分けていきますね~」
花(明るくて気が利く子だな)
花(私も見習わねきゃ)
・笑里が料理を全員分さっと取り分ける。
笑里「花ちゃん、食べよ~」
花「笑里ちゃん、ありがとう」
笑里「全然っ」
海莉「うわ、今日の“お任せ天ぷら”の山芋、うま!!」
・食べようとして、その声に花はハッとする。
花(山芋……)
花(どうしよう……私、軽度の山芋アレルギーなんだよね)
花(でも食べれないって、この場の雰囲気でなんか言いにくいな)
花(いっか、すこし喉がかゆくなる程度だし)
・花が山芋の天ぷらを食べようとしたとき、お箸が伸びてきて怜が花の山芋を食べる。
花「え……っ」
海莉「おい、怜ー。花ちゃんのまで食べるなよな」
怜「うまかったから」
・ぶっきらぼうにそう答える怜。
花(……もしかして助けてくれたの?)
花(それとも怜の気まぐれ?)
・花は黙ったまま、唐揚げとだし巻きを食べる。
──居酒屋『おりおん』の店先──
・お会計を済ませて店先に出てきた六人。
海莉「はー、おなかいっぱい」
海莉「てか、椿姫大丈夫?」
椿姫「……平気」
・椿姫の足元がおぼつかない。
・怜が椿姫の身体を支える。
怜「椿姫の家、ここから近いから送ってくわ」
椿姫「いい。一人で帰れる」
怜「転んで怪我でもしたら、みんな困るだろ」
怜「次から一杯にしとけよ」
椿姫「……わかった」
・花は怜が椿姫の身体を支えてるのを見ながらショックを受ける。
花(二人がどんな関係かなんて私には関係ないのに……)
・気持ちが落ち込む花。
海莉「花ちゃん、家どっち方向」
花「あ……駅のほうです」
海莉「じゃあ僕が途中まで送るね」
花「そんな、一人で大丈夫です」
海莉「いやいや危ないし、僕の家も駅の方だから」
・海莉は花に向かってにこりと笑う。
花「では……お言葉に甘えて」
怜「……」
・それを聞いた怜は、椿姫をつれて帰ることにする。
怜「じゃあ、行くわ」
海莉「りょーかい」
・怜は椿姫と歩いて行く。
・花は二人の後ろ姿を見つめる。
仙道「俺もこれで」
花「今日はありがとうございました」
笑里「花ちゃんまたね~」
花「うん、またね笑里ちゃん」
・仙道の腕を笑里が掴むと二人は並んで歩き出す。
・その二人の様子に目を丸くする花。
花(あれ……)
海莉「ああ、二人同棲中だから」
花「えぇっ!」
海莉「両方の親公認らしくて、今春から付き合い始めたみたいだよ」
花「そうなんですね、お似合いだなぁ」
海莉「じゃあ僕らも帰りますか」
花「はい」
──道路脇・歩道──
・花は海莉と一緒に駅に向かって歩いて行く。
海莉「今日は疲れたんじゃない?」
花「いえ、私こそ入部させて頂いた上に歓迎会まで開いてもらってありがとうございました」
海莉「全然っ、脚本書いてくれる子探してたからこちらこそ嬉しいよ」
・花は少し俯く。
花「……でも本当に私でいいのかなって」
花「れ、じゃなくて夏宮さんずっと不機嫌だったし」
海莉「ねぇ、違ったらごめんだけど」
海莉「怜と付き合ってたの?」
花「え……っ、あの……」
海莉「ぷ。花ちゃんってわかりやすいね」
花「い、え……その」
海莉「実はさ、視聴覚室のとこで二人の会話聞いちゃって。なんか雰囲気で勘づいちゃった」
海莉「当たりでしょ?」
・観念したように肩をすくめる花。
海莉「まぁー、わかりやすいのは怜もだけどね」
花「え? 怜も、ですか?」
海莉「うん。怜、あんな態度だったけど、映画作りに関しては妥協は許さない、人一倍映画への情熱が強いやつだから」
海莉「本当に花ちゃんがふさわしくないと思ったなら、僕が誘ったからって仲間には入れない。でも怜は花ちゃんがサークルに入りたいって言ったとき反対しなかった」
海莉「だからさっき花ちゃんが、私でいいのかって言ってたけど、少なくとも怜は花ちゃんのこと認めてるっていうか、一緒に映画作りたいって思ってると思うんだ」
花「……そうだったら、嬉しいです……」
花「中学の時から……いつか怜と映画作るのが夢だったから……」
海莉「あー……、ってことは中学のとき、怜と付き合ってたんだ」
・花はしまったという顔をする。
花「三ヶ月だけですけど……でも私にとってはすごく大切で忘れられない時間でした」
花「怜は……とっくに忘れちゃったみたいですけどね」
・海莉は神妙な顔をしている。
花「あの……怜の高校時代ってどんな感じだったんですか?」
海莉「うーん、今とあんま変わんないかな。映画作り優先だったよ」
花「か、彼女とかは?」
海莉「あの見た目だからモテてたけど長続きはしないかな」
花「そう、なんですね」
花(聞かなきゃ良かったな……)
花(やっぱり、私のことなんてとっくに忘れてたんだ)
・少し悲しげな顔をする花。場の雰囲気を和ませるように自分の話に転換する海莉。
海莉「まぁ、僕も来るもの拒まずなんで怜のこと言えないけど〜」
海莉「高校の時は一回だけ怜よりバレンタインのチョコ多かったからね。一個だけだけど」
・キラキラ笑顔でニコニコ話す海莉を花は冷静に見つめる。
花(なんとなく……察しはつく)
花(女の子に慣れてるし、遊んでるんだろうな)
海莉「うわ〜ん、花ちゃんそんな目しないで」
花「えっと……大丈夫です」
海莉「あ、絶対引いてるよねー」
・泣き真似をして見せる海莉に呆れながらもクスッと笑う。
花(でも、なんだか憎めない人だな)
海莉「僕だって運命の人なら、本気になるんだよー」
花「じゃあ今までの彼女さんは運命の人じゃなかったってことですか?」
海莉「正解!」
花(運命の人か……)
・三叉路に辿り着き、花は立ち止まる。
花「あ、柊さん。ここで大丈夫です」
・海莉がぷっと笑う。
花「なんですか?」
海莉「柊さんとか久しぶりに呼ばれたなって」
海莉「海莉でいいよ」
花「いや、さすがにそれは……」
海莉「いいからいいから~呼んでみて」
・わくわくしている表情の海莉。
花「えっと……じゃあ、海莉先輩」
・気恥ずかしそうな花を見ながら無邪気に笑う海莉。
海莉「よくできました~」
花(この人、天然人たらしだわ……)
海莉「ねぇ。アパートこのへんなの?」
花「はい。すぐそこです」
海莉「ふぅん」
・海莉はいくつか建っているアパートに目を向ける。
花「送っていただいて有難うございました」
・ぺこりとお辞儀をする花。
海莉「いいえ、どういたしまして。じゃあまたね~」
花「はい。おやすみなさい」
・海莉と別れる花
──花・自宅アパート──
・帰宅してシャワーを浴びた花。ジーユーのルームウェアを着ている。
花「ふぅ、すっきりした~」
・スマホを手に取ると『REI』グループLINEにメッセージが入っている。
──海莉『皆さん無事帰れましたか。今日はお疲れでした~』
・その下に既に笑里が『無事到着』の可愛いうさぎのスタンプを送っていて、仙道が海莉のメッセージにリアクションをしている。
・花は『無事、着きました。今日は有難うございました』と送信。
・すぐに既読がつく。
・海莉からリアクション。笑里から『これからよろしくね』のうさぎスタンプが送られてくる。
花「めまぐるしい一日だったけど……友達もできたし念願の映画サークルにも入れたし」
花(既読……三人か)
・花は怜と椿姫のことを思い浮かべる。
花(怜は冬野さん送ったあと、家に帰ったのかな)
花(それとも昼間、一緒にいた彼女のところに行ったのかな)
花「って……まただ。私には関係ないことなのに」
花「考えるのやめやめっ」
・ふいに花はベランダに目をやる。
花「あ、洗濯物取り込まなきゃ」
・花はベランダに出る。すると、ほぼ同時に隣の(右側)部屋からも誰かが出てくる。
花(あ、お隣さん)
・花はなにげに右方向に視線を向けて驚く。
花「え……っ!」
・その声に隣のベランダから出てきた人物も花を見て目を見開いている。
怜「は?!」
・花と怜が同じアパートで隣同士だったことを読者提示して三話〆
──居酒屋・『おりおん』──(夜)
・メンバーで楽しく食事を楽しんでいる。
海莉「へぇ~、じゃあ花ちゃんは中学の時から脚本に興味あったんだ」
花「はい。いつか映画作りに携わりたいって思っていたので、こうやってサークルに参加させて頂けてすごく嬉しいです」
海莉「ほんと助かる、脚本って誰でも書けるわけじゃないからさ~」
仙道「そうだね。去年はいなかったから、怜のシナリオでいったんだ」
花「視聴覚室に置いてあった作品ですか?」
仙道「よく知ってるね」
花(怜の書いた脚本で作った映画が『線香花火の夜に』なんだ)
仙道「怜のシナリオも良かったけど、怜は次回作は監督兼カメラマンに全力注ぎたいって言ってたから」
仙道「有瀬さんが書いてくれるなら助かるよ」
・クールに話しつつ、ふわりと微笑む。
・大人な雰囲気に思わずドキッとする花。
花「ご期待に添えるよう頑張ります」
・その時、椿姫が口を開く。
椿姫「──怜以上のシナリオなんてそうそう書けないと思うけど」
花(え……っ)
花(いま、なんて)
椿姫「さっき、小さい頃から映画が好きって言ってたわよね。ここにいるメンバー全員映画好きなの。そんなの当たり前だし、いちいち言うことでもないと思う」
椿姫「あと心に届く脚本書きたいから頑張るって、努力するのも当たり前」
海莉「ちょっと椿姫」
椿姫「ここは仲良しサークルじゃないから」
怜「……」
花「……肝に、命じます……」
・椿姫は花をじろりと睨むとビールを飲み干す。
椿姫「海莉、ビールもう一杯」
海莉「えっ! もう三杯目だよね?!」
怜「海莉、椿姫に水」
椿姫「怜、何でよっ」
怜「お前は飲み過ぎると色々良くないから」
椿姫「色々ってなによ」
怜「とにかく水な。わかった?」
・二人の雰囲気に何かを感じ取る花。
花(この二人って……どういう関係なんだろう)
花(でも怜は別の彼女がいたみたいだし……)
笑里「海莉先輩ちょっとどいてくださ~い」
・笑里がそういうと席を立つ。
海莉「え、なになに?」
・笑里は海莉と花の間に座る。
笑里「花ちゃん、LINE交換しよ」
花「えっ、いいの?!」
笑里「笑里ね、ずっと同い年の友達欲しかったんだ~」
花「私も! まだ友達っていえる友達がいなかったから嬉しい」
笑里「花ちゃんも、笑里って呼んでね」
花「うんっ」
・二人はニコニコしながらLINE交換する。
笑里「『REI』のグループLINEも招待するね」
花「ありがとう」
・すぐにLINEに招待メッセージが来る。
・花は参加する。
・その時、怜のアイコンが見える。
花(あ……怜のアイコン……線香花火)
花(海辺で一度だけ、怜と花火したな)
花(最後、どっちが線香花火もつか勝負したのが懐かしい……そしてそのあと──)
※過去に二人が初めてキスをしたことを絵で読者提示。
・そこへ追加の料理が運ばれてくる。→だし巻き、唐揚げ、山芋の天ぷら。
店員「ラストオーダーになりますが、追加のご注文はございますか?」
海莉「いや、これで大丈夫です」
・みんなで食べることに。
笑里「取り分けていきますね~」
花(明るくて気が利く子だな)
花(私も見習わねきゃ)
・笑里が料理を全員分さっと取り分ける。
笑里「花ちゃん、食べよ~」
花「笑里ちゃん、ありがとう」
笑里「全然っ」
海莉「うわ、今日の“お任せ天ぷら”の山芋、うま!!」
・食べようとして、その声に花はハッとする。
花(山芋……)
花(どうしよう……私、軽度の山芋アレルギーなんだよね)
花(でも食べれないって、この場の雰囲気でなんか言いにくいな)
花(いっか、すこし喉がかゆくなる程度だし)
・花が山芋の天ぷらを食べようとしたとき、お箸が伸びてきて怜が花の山芋を食べる。
花「え……っ」
海莉「おい、怜ー。花ちゃんのまで食べるなよな」
怜「うまかったから」
・ぶっきらぼうにそう答える怜。
花(……もしかして助けてくれたの?)
花(それとも怜の気まぐれ?)
・花は黙ったまま、唐揚げとだし巻きを食べる。
──居酒屋『おりおん』の店先──
・お会計を済ませて店先に出てきた六人。
海莉「はー、おなかいっぱい」
海莉「てか、椿姫大丈夫?」
椿姫「……平気」
・椿姫の足元がおぼつかない。
・怜が椿姫の身体を支える。
怜「椿姫の家、ここから近いから送ってくわ」
椿姫「いい。一人で帰れる」
怜「転んで怪我でもしたら、みんな困るだろ」
怜「次から一杯にしとけよ」
椿姫「……わかった」
・花は怜が椿姫の身体を支えてるのを見ながらショックを受ける。
花(二人がどんな関係かなんて私には関係ないのに……)
・気持ちが落ち込む花。
海莉「花ちゃん、家どっち方向」
花「あ……駅のほうです」
海莉「じゃあ僕が途中まで送るね」
花「そんな、一人で大丈夫です」
海莉「いやいや危ないし、僕の家も駅の方だから」
・海莉は花に向かってにこりと笑う。
花「では……お言葉に甘えて」
怜「……」
・それを聞いた怜は、椿姫をつれて帰ることにする。
怜「じゃあ、行くわ」
海莉「りょーかい」
・怜は椿姫と歩いて行く。
・花は二人の後ろ姿を見つめる。
仙道「俺もこれで」
花「今日はありがとうございました」
笑里「花ちゃんまたね~」
花「うん、またね笑里ちゃん」
・仙道の腕を笑里が掴むと二人は並んで歩き出す。
・その二人の様子に目を丸くする花。
花(あれ……)
海莉「ああ、二人同棲中だから」
花「えぇっ!」
海莉「両方の親公認らしくて、今春から付き合い始めたみたいだよ」
花「そうなんですね、お似合いだなぁ」
海莉「じゃあ僕らも帰りますか」
花「はい」
──道路脇・歩道──
・花は海莉と一緒に駅に向かって歩いて行く。
海莉「今日は疲れたんじゃない?」
花「いえ、私こそ入部させて頂いた上に歓迎会まで開いてもらってありがとうございました」
海莉「全然っ、脚本書いてくれる子探してたからこちらこそ嬉しいよ」
・花は少し俯く。
花「……でも本当に私でいいのかなって」
花「れ、じゃなくて夏宮さんずっと不機嫌だったし」
海莉「ねぇ、違ったらごめんだけど」
海莉「怜と付き合ってたの?」
花「え……っ、あの……」
海莉「ぷ。花ちゃんってわかりやすいね」
花「い、え……その」
海莉「実はさ、視聴覚室のとこで二人の会話聞いちゃって。なんか雰囲気で勘づいちゃった」
海莉「当たりでしょ?」
・観念したように肩をすくめる花。
海莉「まぁー、わかりやすいのは怜もだけどね」
花「え? 怜も、ですか?」
海莉「うん。怜、あんな態度だったけど、映画作りに関しては妥協は許さない、人一倍映画への情熱が強いやつだから」
海莉「本当に花ちゃんがふさわしくないと思ったなら、僕が誘ったからって仲間には入れない。でも怜は花ちゃんがサークルに入りたいって言ったとき反対しなかった」
海莉「だからさっき花ちゃんが、私でいいのかって言ってたけど、少なくとも怜は花ちゃんのこと認めてるっていうか、一緒に映画作りたいって思ってると思うんだ」
花「……そうだったら、嬉しいです……」
花「中学の時から……いつか怜と映画作るのが夢だったから……」
海莉「あー……、ってことは中学のとき、怜と付き合ってたんだ」
・花はしまったという顔をする。
花「三ヶ月だけですけど……でも私にとってはすごく大切で忘れられない時間でした」
花「怜は……とっくに忘れちゃったみたいですけどね」
・海莉は神妙な顔をしている。
花「あの……怜の高校時代ってどんな感じだったんですか?」
海莉「うーん、今とあんま変わんないかな。映画作り優先だったよ」
花「か、彼女とかは?」
海莉「あの見た目だからモテてたけど長続きはしないかな」
花「そう、なんですね」
花(聞かなきゃ良かったな……)
花(やっぱり、私のことなんてとっくに忘れてたんだ)
・少し悲しげな顔をする花。場の雰囲気を和ませるように自分の話に転換する海莉。
海莉「まぁ、僕も来るもの拒まずなんで怜のこと言えないけど〜」
海莉「高校の時は一回だけ怜よりバレンタインのチョコ多かったからね。一個だけだけど」
・キラキラ笑顔でニコニコ話す海莉を花は冷静に見つめる。
花(なんとなく……察しはつく)
花(女の子に慣れてるし、遊んでるんだろうな)
海莉「うわ〜ん、花ちゃんそんな目しないで」
花「えっと……大丈夫です」
海莉「あ、絶対引いてるよねー」
・泣き真似をして見せる海莉に呆れながらもクスッと笑う。
花(でも、なんだか憎めない人だな)
海莉「僕だって運命の人なら、本気になるんだよー」
花「じゃあ今までの彼女さんは運命の人じゃなかったってことですか?」
海莉「正解!」
花(運命の人か……)
・三叉路に辿り着き、花は立ち止まる。
花「あ、柊さん。ここで大丈夫です」
・海莉がぷっと笑う。
花「なんですか?」
海莉「柊さんとか久しぶりに呼ばれたなって」
海莉「海莉でいいよ」
花「いや、さすがにそれは……」
海莉「いいからいいから~呼んでみて」
・わくわくしている表情の海莉。
花「えっと……じゃあ、海莉先輩」
・気恥ずかしそうな花を見ながら無邪気に笑う海莉。
海莉「よくできました~」
花(この人、天然人たらしだわ……)
海莉「ねぇ。アパートこのへんなの?」
花「はい。すぐそこです」
海莉「ふぅん」
・海莉はいくつか建っているアパートに目を向ける。
花「送っていただいて有難うございました」
・ぺこりとお辞儀をする花。
海莉「いいえ、どういたしまして。じゃあまたね~」
花「はい。おやすみなさい」
・海莉と別れる花
──花・自宅アパート──
・帰宅してシャワーを浴びた花。ジーユーのルームウェアを着ている。
花「ふぅ、すっきりした~」
・スマホを手に取ると『REI』グループLINEにメッセージが入っている。
──海莉『皆さん無事帰れましたか。今日はお疲れでした~』
・その下に既に笑里が『無事到着』の可愛いうさぎのスタンプを送っていて、仙道が海莉のメッセージにリアクションをしている。
・花は『無事、着きました。今日は有難うございました』と送信。
・すぐに既読がつく。
・海莉からリアクション。笑里から『これからよろしくね』のうさぎスタンプが送られてくる。
花「めまぐるしい一日だったけど……友達もできたし念願の映画サークルにも入れたし」
花(既読……三人か)
・花は怜と椿姫のことを思い浮かべる。
花(怜は冬野さん送ったあと、家に帰ったのかな)
花(それとも昼間、一緒にいた彼女のところに行ったのかな)
花「って……まただ。私には関係ないことなのに」
花「考えるのやめやめっ」
・ふいに花はベランダに目をやる。
花「あ、洗濯物取り込まなきゃ」
・花はベランダに出る。すると、ほぼ同時に隣の(右側)部屋からも誰かが出てくる。
花(あ、お隣さん)
・花はなにげに右方向に視線を向けて驚く。
花「え……っ!」
・その声に隣のベランダから出てきた人物も花を見て目を見開いている。
怜「は?!」
・花と怜が同じアパートで隣同士だったことを読者提示して三話〆



