照りつける太陽、まばゆい光。そしてセミの大合唱。

もう8月も終わるというのに夏の暑さはまだまだ収まる気配がない。

幸い車内は冷房が効いていて涼しい。

私、天野 夢花(あまの ゆめか)は今日、お父さんの再婚相手会う日。

今はその移動中。

「ねえお父さん、再婚相手ってどんな人?」

「そうだなぁ…。あすかさんは優しくてきれいな人だよ」

あすかさん。お父さんの再婚相手の名前だ。

私は物心付く前からお父さんと二人だった。

いつも忙しいのに毎日私と遊んでくれた優しいお父さん。

だからこそ、お父さんが再婚する聞いたとき私も嬉しかった。

「あと詩音(しおん)くんは少し恥ずかしがり屋だったな〜。でもいい子だったよ。」

詩音くんと言うのは私の新しくできる弟の名前。

そうなのだ。私には母親だけでなく弟もできるのだ。

確か年齢は中学3年生だった。私の2個下の年齢。

どんな子なんだろう、仲良くしたいな。
弟ならきっと可愛くて甘えてきてくれるに違いない!

実は私は弟妹がいるのに憧れていたんだ。
それがついに叶うのかと思うとワクワクする。

車に揺られながらそんな事を考えていると車が止まった。

少しお洒落なカフェ。どうやらここで会うみたい。

「さあ、ついたぞ。」

車を降りる。

一気に外の蒸し暑さが押し寄せてくる。
早くお店に入ろう。

お店の扉を開けると、からんころん。と鈴が鳴る。

中からの涼しい冷気が私の体を擽る。

「わっ。涼しい。」

思わず声に出してしまった。

お父さんの再婚相手どこだろ〜。

お店を見渡すと…。

「あ、こっちです!」

女の人の声がして振り向く。

一番奥の席にキレイな女の人とパーカーのフードを被った男の子が座っている。

あの人達かな?



お父さんと一緒に向かいの席に座る。

「はじめまして〜!星山(ほしやま)あすかって言います!よろしくね。」

私の斜め前の女の人、あすかさんが挨拶をしてくれた。

肩あたりで切り揃えられた少し明るめの髪が特徴的な女性。

「はじめましてっ!天野 夢花です。よろしくお願いします…!」

おしゃれな人だなぁ。

「ほら、詩音〜。挨拶しなさい。」

あすかさんが私の正面に座っているパーカーの男の子、詩音くんに声を掛ける。

「…詩音です。」

そう言ってパーカのフードをとった詩音くん。

その瞬間、一瞬周りの音が聞こえなくなった気がした。

わぁっ…。可愛い…。

まるでガラス玉のようなの大きな瞳。長いまつ毛。瞳を縁取るきれいな二重まぶた。
それにふわふわした顎下ぐらいある少し明るい髪の毛。

「…。」

少し怪訝そうな顔で私を見ている詩音くん。

「……なに?」

薄く可愛らしい唇がひらかれ不機嫌そうに首を傾げた。

「あ、ごめんねっ!なんでもないよ!」

「あっそ…。」

視線を私からお水の入ったコップにおとす。氷が溶けてカランと音を立てる。

「ごめんね〜。詩音ったら人見知りで〜。」

あすかさんが少し困ったように笑った。

「天野 (まこと)です。これからよろしくね!」

私のお父さんが詩音くんに挨拶をする。

詩音くんはペコっと頭を下げた。

可愛い顔立ちだなぁ…と思い、詩音くんを見つめていると目があった。

「…。」

一瞬睨んだ後すぐに目線を逸らした。

え…!?なんか怒ってる?私…なにかしちゃったかな?

この先、ちゃんと仲良くやっていけるのだろうか…。