「よいしょ……ん?」

 物置の前に着くと、ドアを開けるために一旦段ボール箱を床に置いた。すると物置の中から、人の声が聞こえてきた。なんだかちょっと、苦しそうな声だった。

 誰かいるのかな?え……まさか、幽霊とか……?

 なわけないよねーと声に出しながら、内心では本当に幽霊がいるのではと怯えながら、物置のドアを開けた。そこには──

「アッ、あんっ♡」
「……ん?」

 はあはあと息を切らせ、シャツがはだけておっぱいが丸出しの女子と、そのおっぱいに顔を埋める女子がいた。

 こっこれは──……

 私の方を振り向く2人。
 突然の光景に驚き目が点のまま、物置の入り口で固まってしまった私。
 
 無の時間が、私たちの間に漂う。

 すると。

「きゃああああ!!!」

 と、上半身がほぼ裸の女子が両腕でおっぱいを隠しながら大声をあげると、シャツを直しながら走って物置から出ていった。

「……」
「……」

 その場で固まったまま沈黙する私と、倉庫に残された女子。よく見るとその女子は、私の隣のクラスの……名前は立川都。「王子様」と呼ばれる女子だった。
 黒髪のショートカット、170㎝の長身、スラッとした手足、そして……綺麗な顔。

 女子にめちゃくちゃにモテるとは噂には聞いていたけど……王子様と呼ばれる女子が、こんなところで女子を喰ってたとは。

 じっと、その女子のことを見詰めていると、王子様が大きなため息を吐いた。

「あーあ、やっとあの大きいおっぱいめちゃくちゃにできるところだったのに……」

 チッと、王子様は頭をかきながら、小さく舌打ちした。
 王子様のことは遠くからしか見たことなかったけど、いつも誰にでも優しくて、笑顔しか見たことなかった……けど。今、私の目の前にいる王子様は、まるで魔王のような怖い顔をしていた。
 
 すると、王子様はスカートのポケットに両手を入れながら、私のところに向かってきた。