別に塩谷君に女として見られたい訳ではないし、そもそも私と塩谷くんは五つも年が離れている。

ただ浮気していた圭太のことがあり、自分はそんなに女性として魅力がないのかと、何気ない一言でも落ち込みそうになる。


「……俺、なんか間違えました?」 

「あ、合ってるわよ。考えたら塩谷君って私より五個も下だしね、ないわよね色々と」

その言葉に塩谷君が柔らかい前髪をくしゃっと握った。

「あー、そっちですか。同じ社会人でしょ。俺、恋愛に年とか関係ないですけど」

(いま、なんて言った?)

思わず視線を上に上げれば、塩谷くんの切長の目と目が合って、彼が悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「もっかい言いますね。俺、年上とか年下とか関係ないですよ。だから先輩も恋愛対象ですね」

「はぁあ……」

平然とそんなことを言ってのける塩谷君に今度は私がため息を吐き出していた。

塩谷君は私とペアで仕事をしていることもあり、こうやって私を揶揄うような発言をすることが前からあるのだ。


「そうやって人を揶揄うような事言うの、やめなさいっていつも言ってるわよね」

私がわざと睨んで見せれば、塩谷君がふっと笑った。