深夜1時のミルクティー

※※

「……ん……っ」

カーテンから差し込む光を感じて私は目を開ける。  

(あれ……ここ)

見慣れない天井にすぐに起き上がれば、塩谷君のスーツのジャケットが床に滑り落ちる。

「え……これ。いつの間にか、寝てた?」

私はソファーから立ち上がるとジャケットを拾い上げる。見れば塩谷君はガラステーブルの向こう側で丸くなって眠っている。

トレードマークのメガネはガラステーブルの端に置いてあり、メガネを外した寝顔は年齢より幼く見える。

(起こさないように……)

私はジャケットを塩谷君の身体にそっと掛ける。その時、ガラステーブルにメモが置いてあるのに気づいた。


──『先輩が座ったまま寝てしまったので、ソファーに寝かせましたが、誓って何もしてません』

私は律儀で生真面目な塩谷君のメモに思わず笑う。

(副総長してたとか、やっぱり想像できないな)

私は同じく寝床でまだすやすやと寝息を立てて眠っているモチに気付かれないように、鞄からスマホを取り出した。


期待はしていなかったが、圭太からの連絡は入っていない。

私はすぐに圭太へのメッセージを作成する。

──『別れよ。榎本さんとどうぞお幸せに。二度と私に話しかけないで』


送信してすぐにブロックすれば、心がすっと軽くなる。

(これでよしと)