深夜1時のミルクティー


「あー、俺、何言ってんだろ」

「ううん。ありがとう……」


私はティッシュで鼻を啜りながら、圭太とのこの一年を振り返る。

そう言えば圭太は私のことを塩谷君以上に知っていてくれただろうか。

私が可愛いキャラクターものを密かに集めていること、おしゃれなお店が好きなこともきっと圭太は知らない。

よく考えたら一度も私が好きなキャラクターについての話はしたことないし、聞かれたこともない。食事だっていつもお酒が好きな圭太に付き合って居酒屋でご飯を食べることが多かった。

「……圭太より、塩谷君の方が私のことよく知ってるのかもね」

「それはどうかわかんないですけど……まぁ、先輩の言葉を借りたら、俺もこの一年半、ずっと先輩の隣で一緒に仕事してたんで」 

「ほんとだね」

でもこの一年、私は圭太と付き合っていて特に不満もなく、幸せだと感じていた。

(……どこが好きだったんだろう)

私はミルクティーの中をじっと見つめる。ゆらゆらと表面が波打つミルクティーは私の今の心の中とよく似てる。

「一年も付き合ってたのに……どこが好きなのかわからないのに、でもすごく好きだった……」

「…………」


どこがどう好きなのかと問われればテストの模範解答みたいには答えられない。

「俺は人を好きになるのに明確な理由なんてないと思いますよ」

「うん、そうかもね」

「だから……先輩が好きな理由が思い浮かばなくても好きだと思うのってわかります」

塩谷君も同じような恋をしたことがあるのだろうか。いつもよりも低いトーンでそう話すとミルクティーに口付ける。

「……私、月曜からどんな顔して会えばいいのかな……」


(あと榎本さんとのこと、何て切り出そう)