深夜1時のミルクティー

「え?」

「高森さんとのことです。始発までですけど」

「あー……うん。でも聞いてもつまんない話だし」

「つまらない事じゃないですよね。少なくとも先輩が泣くほど悲しかったことでしょう」

(やっぱりバレてたんだ。泣いてたこと……)

「勿論、無理にとは言いませんけど……俺、誰にも言いませんので」

「うん……じゃあ……」


私はひと呼吸置いてから口を開いた。本当は誰かに聞いてほしい。

「実は……今日、付き合って一年の記念日だったから食事の約束してたの。でも飲み会入ったって言われて……残業して駅に向かってたら榎本さんと圭太がホテル入ってった……」

塩谷君は真面目な顔をしたまま、私の話の続きを待っている。

「なんか……榎本さんって私より三つ下で若いし、背が小さくて可愛らしいくて……圭太は本当は私とは正反対の女の子らしい子が好みだったんだなって。ずっと……私だけが圭太のこと好きで……」

(やば……泣きそう)

塩谷君がさっとティッシュケースを私に差し出す。

「ごめ……みっともないね」

そう言ってティッシュで涙を拭う私を見ながら塩谷君が唇を湿らせた。

「俺は先輩のことみっともないなんて思わないし、女の子らしくないと思ったこともないですよ」

「いいよ……変になぐさめなくても……」

「本当にそう思ってます。望月先輩は仕事に対してはすごくストイックですし、妥協しない。厳しくて真面目でサバサバしてる一方でキャラクターものが大好きとかギャップすごいし、インスタ映えするランチとかケーキとかも興味津々で、そう言うとこ可愛らしいなっていつも思ってて……」

そこまで言った塩谷君が、急に口元を手のひらで押さえた。