深夜1時のミルクティー

「うちも猫ちゃんオッケーの部屋にしとけば良かったな……寂しくないし」

最後の一言は余計だったかもしれない。

少しだけ間があってから台所にいる塩谷君から返事が返ってくる。

「……いつでも会いに来ていいですよ」

「うん。ありがと……」

私は声のトーンを落としてそう言うと、モチを起こさないように手のひらをそっと離した。


「お待たせしました」

塩谷くんがソファーの前のガラステーブルにマグカップを二つ、ことんと置く。  

マグカップの中からはミルクティーのいい香りが漂っている。

「ミルクたっぷりです」 

「頂きます」

私はすぐにミルクティーを一口飲む。

「美味しい……」

ほんのり苦くて甘い味が口内に広がって、すぐに冷え切っていた胃があたたかくなる。

「こんな時間ですしノンカフェインにしときました」

その言葉に壁掛け時計を見れば、時計の針はちょうど深夜1時を指している。


「……ありがとう、ほんと気が利くよね。塩谷君って」 

「そんなことないですよ。うち小さい時に母親が病気で亡くなって、父親が再婚したんですよ。だからなんていうか……変に空気読みすぎなだけなんですよ」

塩谷君は私に気を遣ったのだろう。そう言うとソファーには座らず、ガラステーブルを挟んだ向かいの床に胡座をかいた。

「……ソファー座ったら? えと、私の家じゃないのに何だけど……」

「いや、大丈夫ですよ」

「うん……」