「……ほんといい子ね」

手のひらに伝わる小さな温もりがなんだかすごくホッとする。

「あ、塩谷君。保護猫ちゃんって言ってたよね?」

「そうです。友達が保護活動してて休みの日に譲渡会の手伝い行ったんですけど、その日は子猫が多くて……モチだけ里親さんが見つからなくて気づいたら連れ帰ってました」 

塩谷君が私に撫でられて、気持ちよさそうにしているモチを優しく見つめる。


「塩谷君らしいね」 

「俺らしいですか?」

「うん。前に、迷い猫を見つけて首輪から持ち主に連絡して引き渡ししてたら、遅刻したことあったじゃない?」

「あー、ありましたね。遅刻とか社会人失格ですよね。でもどうしても放っておけなくて」

「優しいよね」


塩谷君は本当に純粋に優しくていい子だなと思う。 

「優しさと優柔不断って紙一重っていいません?」

「うーん、それは塩谷君には当てはまらないかな。少なくとも私の中ではね。上手く言えないけど混ざり物がない綺麗な優しさだと思うよ」

偽善でも同情でもなく、綺麗な優しさというのは、持って生まれた素質のようなものじゃないだろうか。

(ん?)

見れば、塩谷君の頬がほんのり赤いようにみえる。 

「塩谷君? 照れたの?」

「いえ、違います……ポットの湯気じゃないすか」

「そういうことにしておこうか」

「お願いします」

「あはは」 


私が思わず笑ったのを見ながら、塩谷君が拗ねたように少し口を尖らせている。

(可愛いな。まだ24歳だもんね)

そして私が再びモチに視線を移せば、モチは幸せそうな顔で眠ってしまっている。