「どうだったかしら。一度しか行ったことないし」
「え、なんで?」
「あー⋯⋯もうカッコつけてもしょうがないから言うわ。私、本当は神奈川には六年しか住んでないの。子供の頃から、今の時期には父の実家のある広島で、原爆の日に灯篭流しっていうのが恒例で」
「なるほど。広島出身だったんだ?」
「ううん⋯⋯鳥取」
「へぇ!鳥取出身の人って、30年近い人生で初めて会ったよ」
「もー⋯⋯!昔から、どこへ行ってもそれを言われるのが嫌だったのに」
「ごめんごめん」
目の前を、大学生ぐらいのカップルが横切った。
初々しくて、手を繋いで歩いていても何の不自然さもない。
手をつなぐほど若くないから⋯⋯なんて歌詞を思い出す。確か、ユーミンの【ためらい】。
私の場合、ティーンの頃でさえピュアな恋をしたとは言えず、そこまで好きでもない相手でも、公衆の面前でベタベタすることにさほど抵抗はなかった。
「え、なんで?」
「あー⋯⋯もうカッコつけてもしょうがないから言うわ。私、本当は神奈川には六年しか住んでないの。子供の頃から、今の時期には父の実家のある広島で、原爆の日に灯篭流しっていうのが恒例で」
「なるほど。広島出身だったんだ?」
「ううん⋯⋯鳥取」
「へぇ!鳥取出身の人って、30年近い人生で初めて会ったよ」
「もー⋯⋯!昔から、どこへ行ってもそれを言われるのが嫌だったのに」
「ごめんごめん」
目の前を、大学生ぐらいのカップルが横切った。
初々しくて、手を繋いで歩いていても何の不自然さもない。
手をつなぐほど若くないから⋯⋯なんて歌詞を思い出す。確か、ユーミンの【ためらい】。
私の場合、ティーンの頃でさえピュアな恋をしたとは言えず、そこまで好きでもない相手でも、公衆の面前でベタベタすることにさほど抵抗はなかった。



