ためらい

「俺のことが好きで、別れたくないって言ったのは、本音？」
「そうよ。でも、あなたが妻子を望むのであれば、別れるしかないって思う」
　星夜は、空を見上げて、
「結婚したところで、織姫と彦星みたいに、一年に一度しか会えないんじゃねぇ⋯⋯。それなら、結婚しなくても、いつも一緒に居たいよ」
　もし、私がもっと若ければ、そんな言葉も素直に受け止められたのだろうか。
「あなたがそれでいいなら、私もそれでいいのよ」

　星夜は、そっと私のことを抱きしめてくれた。
　変に分別がついてしまった私は、いつ別れを告げられてもいいという覚悟を持ち続けてしか、彼と一緒には居られない。
　それでもいいから、一緒に居たい⋯⋯初めてそう思った。


「へぇ⋯⋯有名なお祭りというだけに、風情があっていいわね」
　今日、私たちは仙台の七夕祭りに来ている。
「湘南の七夕祭りはどうだった？」