ためらい

 なんだ。
 本気だったのは、私だけだったのか。
 馬鹿馬鹿しい。

 こういう結末だけは避けたかったから、いつ終わってもいいように付き合ってきたのに。
 年齢的に、これが最後の恋だろう。
 いい歳して、若い男に本気になった末の失恋なんて、あまりにも無様で耐えられないから、こんな思いはもう二度としたくない。

 一刻も早く、彼と出会う前の私に戻りたい。
 何にも縛られず、自由気ままにひとりを満喫していた、ほんの少し前の暮らしに⋯⋯。


 あれから、早くもひと月が過ぎた。
 孤独を愛する女だったはずなのに、星夜と別れてから、ひとりで居るのが淋しくなってしまった。
 だから、社会人サークルなどに顔を出したりして、孤独を紛らしている。
 部屋に居るのも嫌で、私はあの海へと車を走らせた。

 もう、海水浴客もいない時間。
 車を降りて、ひとりで浜辺を歩いた。