彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)





「あ!?やっと出てきたぞ!」
「馬鹿!声が大きい!」
「フッチーあいつだよ!」
「あのババアだよ、ルノア。」




そんな声が聞こえたが、





(知らないふり、知らないふり!)





師範の言葉を呪文に、気づいてないふりをしてレジに向かう。
そして、レジで会計を済ませる。



「ごちうさま♪」
「美味しかったです・・・。」
「ありがとうございましたー♪」



船越師範が前を歩き、私がその後について行く。
ドアのガラスに、会計レジがうつる。
そこに渕上達が立っているのが確認できた。





(・・・・・なんでついてくるの?)





私の家を知ってるはずの渕上の行動が読めない。
外に出れば、冷たい風が全身にあたる。



「寒い・・・!」



思わずつぶやけば、クラスメート達がサッと物陰に一斉に隠れた。





(うわ・・・ガキでもわかる隠れ方だな。わかりやすい馬鹿共だぜ・・・!)

「ドン引きだ・・・。」

「ひくねー!」





私のつぶやきが聞こえたのか、船越師範が叫んだ。





「これ、風邪ひくから走るよー!!」

ガシ!

「は?」





そう言うなり船越師範は、私へと向き直って体に触れ、





ヒョイ!

「はあ!?」





私をお姫様抱っこし、





「ヘイ!!カモ―――――――――――――ン!!!」

ギュルルルルルル!!

キキ――――――――――!!

「うわ!?」
「きゃあ!?」
「ひー!?ひかれる!!」



(えっ!?)





片腕上げて、私を横抱きにする船越師範の目の前に、どこでもありそうな車が急停車。





バン!!

「「師範!乗って下さい!!」」





後部座席がスライドしながら開く。





「ごくろー!!」
「ええ!?」





そこへ、老女とは思えない身軽さと素早さと力強さで、私をお姫様抱っこしながら、船越師範が飛び乗った。





(この人達は――――――――――!?)

バン!!





認識した瞬間、後部座席のドアが閉まり、車は急発進。





ブロロロロロロロ――――――――――!!

「ま、待てー!!!」
「待ちやがれ、ゴミ原――――――!!」





そんな声が外からしたかもしれないが、気づけば車道を爆走していた。