彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)






勉強を頑張る代わりに、道場に通わせてもらっていた。
両親は、勉強に影響が出ては困るからと、昇級試験はもちろん、1度も大会に出る許可をくれなかった。
それで船越師範が、「勉強だけで来ても意味がない。」と苦言したことを、2人は、父も母も根に持ち、最後は強制的にやめさせられ、船越師範への連絡先も消されてしまった。





「ごめんなさい、船越師範。」
「凛、謝るんじゃないよ。凛はなにも悪くない。悪いのは環境だ。空手の指導を受けるよりも、いじめを受ける方が、凛の勉強に悪影響だよ!」
「それはわかってるのですが―――――――――」
「幸い、後藤先生が味方なんだろう?」
「そうですけど・・・」
「凛がさ、後藤先生を巻き込みたくない気持ちはわかるよ?だけど、役に立たない井谷にはついていけないだろう?」
「・・・はい。」
「凛は私にとって、大事な愛弟子だ!ここで偶然出会えたのも、きっと神様のお導きだよ!私に頼りな!いいね!?決まりだ!」
「船越先生、そんな、強引な・・・」
「女は強引なぐらいが一番いいんだよ!ほら、後藤先生の連絡先を私に教えておくれ!」
「え?」
「善は急げだ!今すぐ連絡をする!」
「え!?で、でも、後藤先生は、テストの採点中かもし―――――――」
「いいからスマホ貸しな!借りるよ!」
「あ!?ちょっと師範!?」
「あら、私と同じ機種だね!話が早い!電話帳は―――――家族以外登録なし・・・。あ、これが後藤先生だね!」





あっさりと連絡先を見つけると、ちゅうちょなく、発信ボタンを押す老女。





トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル♪





「ちょっと船越師範!?」
「凛が最初に話して、電話を私に代わるんだよ!いいね!」
「ちょ、ちょ、ホントに、待っ!」
〈もしもし?菅原さん?〉
「ほら出たよ、凛!」



(何が出たよだ!?かけりゃ出るに決まってんだろう――――――――!!)



そう思ったが、口に出すのは我慢して、後藤先生に伝えた。