彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)




店内に入った船越師範を見て、中年の店員が目を輝かせた。



「こんにちは、船越師範!お弟子さんとおやつタイムですか?」
「ああ、そんなところだよ。ちょっと悪いんだけど、後から入ってくる3人組と席を離してくれないかね?こいつらだ。」



そう言って、私に見せたスマホ画面を見せる。





「うわ!こいつら、あゆみが丘学園のヤンキー達じゃないですか!?」
「知ってるのかい?」
「ええ!金にものを言わせて、すごくマナーが悪いんです!店長も大人の付き合いの関係で、出禁にできないんですよ!名前は確か――――このブスが鳥海で、このクズが難波で、このカス男子が中山と言います。」
「へえ~良い情報をありがとうね。とりあえず、日替わりのケーキセットの紅茶を2つね?」
「かしこまりました、船越師範♪」





中年の店員が目で合図すると、別の男性店員がアイコンタクトして誘導してくれた。
案内されたのは、店内でも死角になる場所。
周りからは見えない席だった。





「座りな、凛。」
「は、はい、船越師範。」





着席すれば、フーと言いながらコートを脱ぐ老女。



「あの、先ほどの女性店員さんとは・・・」
「友達さね。ほら凛、コート脱ぎな!ここは暖房が利いてるいい席だよ!」
「はい・・・。」



言われるまま行動し、コードを脱いだところで先ほどの女性店員さんが御冷を持ってきた。




「師範、師範!例の3匹来ました!師範たちが見える席にしろって言ったので、それっぽい席に通しておきました!もっとも、この席はどこからも見えないんですけどね~クックックッ!」
「良い仕事してるねぇ~あんた!チップだよ!引き続き、3匹を監視しておくれ。」
「かしこまりました~♪」




悪い笑みを浮かべあうと、2人はそのまま離れる。
去り際に女性店員は、私に「ファイト♪」と声をかけてくれた。





(え?私、ファイトしないといけない状況なの・・・?)





「で?凛はいつからいじめられてるんだい?」
「船越師範、私―――――」
「あんたのことだから、我慢してるんだろう?あんたの両親には言うだけムダ!告げ口する気にもならないから、話してごらん。」
「・・・はい。」





そう言われ、船越師範にいじめられている話をした。