期末テストの初日も終わり、私は母に友達の家で勉強してから帰るとLINEをした。
(これでアリバイは完璧。)
あとは、人に見られないようにヤマトの家に向かえばいいだけ。
(けっきょく、プランGというのは、わからないままね・・・。)
1限目の数学が終わり、2限目の英語と、3限目の物理を受けたが、特に何も起きなかった。
(いや・・・攻撃は受けなかったけど、クラスの奴らの態度が悪かったな・・・。)
いつもなら、テストを前に必死で私には構わないのに、なぜか、みんなでニヤニヤしながら私を見ていた。
(薄気味悪い・・・。)
いじめをする人間の考えはわからない。
(本当は、我慢する私が行けないんだろうな。)
我慢して、我慢して、我慢して。
我慢できなくなってみんな、あの世を目指してしまう。
(でも私は、死んだりはしない!!)
私には生きる希望がある。
(真田瑞希様に告白して、入籍してもらって、夫婦になるという夢があるから!!)
再確認すると、ギュッと拳を強く握る。
鈍らない心で、ヤマトの家へと続く分かれ道を進もうとした時だった。
「凛じゃないのか?菅原凛。」
「え?」
ふいに、甲高い声に引き留められた。
声のした方を見れば――――――――――
「船越春師範!?」
「やっぱり。菅原凛だったね。」
そう言って優しく笑いかける年配女性。
「ご無沙汰してます!お変わりありませんか?」
「ほほほ!元気よ。あなたが、うちの道場をやめて半年以上ご無沙汰ね。」
そう言いながら、ギュッとハグしてくれる船越春師範。
肝っ玉母ちゃんという印象のあるふくよかな女性で、誰にでも分け隔てなく空手を教えてくれた。
また、空手家として有名な船越義珍さんを親族に持つ女性師範だった。
再会した師範は、毛皮のコートを着込んでいたので、抱きしめられた時、あったかかった。
ハグから解放された時、船越師範は言った。


