彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)




期末テストの初日も終わり、私は母に友達の家で勉強してから帰るとLINEをした。



(これでアリバイは完璧。)



あとは、人に見られないようにヤマトの家に向かえばいいだけ。



(けっきょく、プランGというのは、わからないままね・・・。)



1限目の数学が終わり、2限目の英語と、3限目の物理を受けたが、特に何も起きなかった。



(いや・・・攻撃は受けなかったけど、クラスの奴らの態度が悪かったな・・・。)



いつもなら、テストを前に必死で私には構わないのに、なぜか、みんなでニヤニヤしながら私を見ていた。



(薄気味悪い・・・。)



いじめをする人間の考えはわからない。



(本当は、我慢する私が行けないんだろうな。)



我慢して、我慢して、我慢して。

我慢できなくなってみんな、あの世を目指してしまう。





(でも私は、死んだりはしない!!)





私には生きる希望がある。





(真田瑞希様に告白して、入籍してもらって、夫婦になるという夢があるから!!)





再確認すると、ギュッと拳を強く握る。
鈍らない心で、ヤマトの家へと続く分かれ道を進もうとした時だった。





「凛じゃないのか?菅原凛。」
「え?」





ふいに、甲高い声に引き留められた。
声のした方を見れば――――――――――





「船越春師範!?」
「やっぱり。菅原凛だったね。」





そう言って優しく笑いかける年配女性。





「ご無沙汰してます!お変わりありませんか?」
「ほほほ!元気よ。あなたが、うちの道場をやめて半年以上ご無沙汰ね。」





そう言いながら、ギュッとハグしてくれる船越春師範。
肝っ玉母ちゃんという印象のあるふくよかな女性で、誰にでも分け隔てなく空手を教えてくれた。
また、空手家として有名な船越義珍さんを親族に持つ女性師範だった。
再会した師範は、毛皮のコートを着込んでいたので、抱きしめられた時、あったかかった。
ハグから解放された時、船越師範は言った。