停学明けの日、菅原凛の姿であゆみが丘学園に向かう。
社会的には最悪の状況かもしれないけど、私の心は軽かった。
(これからは、大好きな瑞希お兄ちゃんと一緒に暮らせる!!)
その思いで、顔がにやけてしまう。
それでも、学校に近づくにつれ、表情を引き締める。
これから私は、菅原凛を演じなければいけない。
イジメの被害者として戦う、いじめっ子の冤罪をかけられた菅原凛として、渕上ルノア達と学校と両親と戦っていかなければならない。
(絶対に泣き寝入りしない!!負けないんだから!!)
「凛!!」
聞き覚えのある声がした。
「「凛っ!!」」
誰の声かわかっていたけど、振り返らなかった。
そしてら、強引に肩をつかまれた。
「凛、なにやってるんだ、お前は!?」
そう言って、私を振り向かせたのは私の原料になった精子。
「今までどこにいた!?船越のところか!?」
「・・・。」
その問いかけに無言を貫けば、バンと背中を叩かれた。
「なにふてくされてるの!?なんとか言いなさい、凛!」
叩いてきたのは、私の原料になった卵子だった。
「荷物を持ち出したの、バレてるのよ!?プチ家出して、気がすんだでしょう!?帰って来なさい。」
「・・・。」
その問いかけにも無言を貫けば、精子と卵子の顔が赤くなっていく。
「凛!どこまで親を馬鹿にすれば気がすむの!?」
「凛!お前がここまで最低な人間だとは思わなかったぞ!?」
「よく自分のお子さんを、そこまで悪く言えますね!!?」
突然、私を生み出した人間の言葉を否定する声が響く。
ここでようやく、私は声を出した。


