彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)






(なんでタイマンしなきゃ、ダメなんだっけ?)





―凛!―





(そうだ・・・・瑞希お兄ちゃんに言われて―――――――!)





瑞希お兄ちゃんが見てる。





そう気づいたら、自分に迫る子のこぶしを食らうわけにはいかない。





(回避しよう。)

「―――――――――流し。」

パシッ!

「あん!?」





言葉通り、流すように払いのけて腰をかがめる。





「へっ!やっとやる気出したか!?」





そう言いながら、相手が数歩後退して身構える。
だから私も、正面の――――――前方からの攻撃に備えて身体を絞る。





「なんだ凛の奴!?空手の型でも披露する気か!?」
「見てればわかるよ、真田瑞希!」





読めない凛の動きに困惑すれば、そっけなくばあさんが言う。







「勝負はついてる。」







その言葉で、凛と大河を交互に見る。
大河と目があえば、俺に軽く会釈し、凛へと顔を向けた。







「いいぜ凛道!本気でぶちかま―――――――!!」
「――――――――――――――突き。」

ボゴッ!!

「がはっ!?」







円城寺君の体の軸を見定め、そこに一撃を入れた。





「ぐうぅ・・・!!!」





大きくうめき声をあげ、目を見開く龍星軍の総長代行。
見開かれた目が白目になり、ゆっくりと私の目の前で両ひざをつき、顔面からリングにめり込んでしまった。





ボフン!!

「大河ッ!!」





俺の呼びかけに、大河は答えない。

試合を止める前に――――――――――――





〈くっ!?ダ・・・ダウンしちゃいましたねー!?カ、カウントを、とりまーす!!〉





九条アキナが一瞬顔をゆがめるが、すぐに満面の笑みで数を数え始める。





〈ワン!ツー!スリー!〉


「・・・ありゃ、ダメだな・・・。」
「ああ・・・ダメだろうな。」





俺のつぶやきに、烈司が返事をする。
俺の目に映る大河はピクリとも動かない。
凛も凛で、大河を見つめたまま棒立ちになっている。