(なんでタイマンしなきゃ、ダメなんだっけ?)
―凛!―
(そうだ・・・・瑞希お兄ちゃんに言われて―――――――!)
瑞希お兄ちゃんが見てる。
そう気づいたら、自分に迫る子のこぶしを食らうわけにはいかない。
(回避しよう。)
「―――――――――流し。」
パシッ!
「あん!?」
言葉通り、流すように払いのけて腰をかがめる。
「へっ!やっとやる気出したか!?」
そう言いながら、相手が数歩後退して身構える。
だから私も、正面の――――――前方からの攻撃に備えて身体を絞る。
「なんだ凛の奴!?空手の型でも披露する気か!?」
「見てればわかるよ、真田瑞希!」
読めない凛の動きに困惑すれば、そっけなくばあさんが言う。
「勝負はついてる。」
その言葉で、凛と大河を交互に見る。
大河と目があえば、俺に軽く会釈し、凛へと顔を向けた。
「いいぜ凛道!本気でぶちかま―――――――!!」
「――――――――――――――突き。」
ボゴッ!!
「がはっ!?」
円城寺君の体の軸を見定め、そこに一撃を入れた。
「ぐうぅ・・・!!!」
大きくうめき声をあげ、目を見開く龍星軍の総長代行。
見開かれた目が白目になり、ゆっくりと私の目の前で両ひざをつき、顔面からリングにめり込んでしまった。
ボフン!!
「大河ッ!!」
俺の呼びかけに、大河は答えない。
試合を止める前に――――――――――――
〈くっ!?ダ・・・ダウンしちゃいましたねー!?カ、カウントを、とりまーす!!〉
九条アキナが一瞬顔をゆがめるが、すぐに満面の笑みで数を数え始める。
〈ワン!ツー!スリー!〉
「・・・ありゃ、ダメだな・・・。」
「ああ・・・ダメだろうな。」
俺のつぶやきに、烈司が返事をする。
俺の目に映る大河はピクリとも動かない。
凛も凛で、大河を見つめたまま棒立ちになっている。


