リング前の凛道蓮の待機場所に戻った時、
「凛!!」
ヤマトと雷太の側に、あの方はいらっしゃった。
「瑞希お兄ちゃん・・・。」
「凛!マジで大丈夫か!?」
私に近寄り、肩を抱きながら私の顔をのぞき込む瑞希お兄ちゃん。
「具合悪いなら、シゲ先生に見てもらうか!?薬飲まなくて、へ――――――――・・・・・・!?」
「平気ですよ。」
笑顔で伝えたのだが―――――――
「・・・・・・・なにがあった?」
「え?」
「なにかあっただろう、凛?」
キレイな瞳が、私を見つめながら聞いてくる。
「なにがあった、凛・・・!?」
―あたし達は、菅原凛と冗談で遊んでただけよ。遊びをいじめだと決めつけないでほしいわ。―
「・・・何もないですよ?」
「俺に嘘ついても無駄だぞ凛!今の凛は――――――――――!!」
「瑞希!時間だぞ!」
「烈司!」
瑞希お兄ちゃんの言葉を、ヘビースモーカーが遮りながら言った。
「凛たんへのエールを送る時間は終わりだ。」
「ちょっと待て!今凛を試合に――――――!」
「凛たんと円城寺を公平に応援するなら、激励タイムは終了だ。悪いな、凛たん。タイマン前の瑞希との触れ合いの時間は、ここまでなんだ。」
「・・・わかりました。」
(瑞希お兄ちゃんからの激励タイム、渕上達のせいでなくなっちゃった・・・。)
あんな会話を聞いたせいで・・・!!
―菅原凛は、過去に家出をしてる。小学生の家出と、高校生の家出は意味が違ってくる。菅原凛が家出中にパパ活をしてたって話せば、だれも疑わずに信じるはずよ。―
火に油を注ぐとは、こういうことを言うのだろう。
どんどん怒りの感情が蓄積していく。
それが爆発しないように、必死で気を紛らわせるが――――――
(渕上ルノアのつむいだ言葉が、私を苦しめる。)
近くのものに、八つ当たりしそうな気持になっていく。
今のところ、凛の異変に気付いているのは真田瑞希だけだった。
~悪女が花を添える!?漢同士のマジタイマン!!~前編~完~


